優しい人になるのは難しいのに
優しくない人になるのは容易い
眉間に皺寄せて不機嫌そうに言い放てばいい。
優しい人になるのは難しいのに
優しい人のふりをするのは容易い
その顔に ....
赤が一片川に落ち
薄紅の花弁に早変わる
埃絡まる土上で
萎れ果てぬ事のないように
全て集めて水に還す
薄紅ひらひら翻る
川流に抗い下り行く
朝陽染み込ませたかのように
辺りをほんの ....
窓越しの陽射しが
薄いまぶたを通過する
汗ばむ髪をかき上げると
晩夏が私に混ざり合って香る
あの日に帰りたい
そう思ったことの無い自分が
幸せなのか不幸せなのかわからぬまま
季節がま ....
あなたが創った
ぼくらの時計は
今日も単身赴任の
この部屋に
あなたの眠る病室に
永遠の時を
刻んでいる
雨が好き
世界が濡れて
恍惚の芳香が包む
夕と夜の間に
草花と土が
なめらかな生命を与えられ
喜びの香が
艶やかに立ち昇る
火照る身体を
委ねたアスファルトの上
はしゃぎ疲 ....
記憶が
ぽろぽろ
剥げ落ちて
さっきのことも
分からなくなる
いつか
あなたが誰かも
分からなくなるのかな
恐怖は包装された箱の中
いくつも
転がっているか ....
きみがふわふわと
優しい歌声を張り巡らすので
ぼくはバシャバシャと
激しいリズムを打ち鳴らした
やがて二つはしとしとと
美しいハーモニーを
一月(ひとつき)もの間
奏 ....
{引用=
青い夜道
降りしきるものに
真紅がまじり
花片を踏みしめ近づく
白い脚先
冷たい絹に包まれた
やわらかな しなやかな
抱きしめても届かない身 ....
昨日の嵐で庭の牡丹が萎れまして
そのくすんだ赤い花弁を撫でながら
ヤライフウウノコエ……と妹が呟きました。
その指の白さと花弁の赤さを見ながら
私は本当に彼女が愛おしいと思うたのです。
....
気がつけば、貴女の躰で眠っていた
窒息しそうなほど、むせ返る色気の中
妖しいひかりが、神秘的に照らしている
手折れたつばさの、はねの一枚一枚を
貴女はひろいあつめた、まるで世界がおわる前の準備 ....
秤の林檎にくちびるを寄せ
カリ、と音を立てて齧れば
金色に光る果実から赤い石がおちる
深い色の底に
昔、こころの中に住んでいた少女を見つけ、
名前を呼ぼうとしたが思い出せない
彼女 ....
歩みを止めて
立ち尽くし
しゃがんでしまった
立ち上がらなきゃ
そう思うけど
思えば思うほど
立ち上がれない
いいジャンプをするために
そうだ
いいジャンプす ....
波線の午後を
すりぬける腕
指の大きさ
夜のまぶしさ
花に埋もれ 花となり
花を生み 花を摘み
深く鏡を被る人
無数の火の穂の歩みの先へ
冬の浪の浪の浪へ
着 ....
母の日
雨
ありがとうの気持ちが
遠回りしながら一回り
ありがとうは姿を消して
私はありがとうを通過した憎しみを噛んでいた
飲み込むことも
吐き出すこともできず
ただ ....
春のおとずれは
やわらかい
ことばの身軽さと
陽気がとても
近くなる
鳥たちの鳴く声と
色とりどりに
咲く花と
寒さをかき消してゆく
波のかさなり
しろい音 ....
山の背中にあるものは
いたずらからすの
帰る家
山の背中にあるものは
遊びつかれたきつねの寝ぐら
山の背中にないものは
枯れ葉やつぼみを
こばむもの
折れた枝に ....
本の隙間から
ふとした時間の割れ目から
長くあけることのなかった引き出しから
ふいにあの頃のあなたが顔を出した
懐かしさに時間を忘れ
あの頃の自分になってしまう
....
桜と梅が いっしょに咲いた
ばあちゃんが桜を見て
うめざくら
なんていったので
思わずぷっと吹き出した
笑ったあとで悲しくなった
あなたにも
いつか
桜も梅も
スイセンもヒヤシン ....
ただ
春風のなか
悲しい言葉だけが
過ぎゆく
夕暮れの風は
ひんやりと
こころを冷たくする
春
この
哀しき季節
あなたは桜だった
溶け孵化し
桜の花びらに似せた羽根で
ちろちろ漂うモンシロチョウ
桜は高い
届きそうもなくて
飛んでいけたら
あなたの頭に留まってリボンになってあなたを飾る ....
たった
一つの愛しみを
抱いて
思うところを
見つめ
寄りそう人の
片時
で
ほほ笑んで
いる
貴女の
握りしめた
左の手の
小さな 小さな
種に
なりた
....
小指の先くらいの
小さな虫が
ほんの僅かなひかりで
戯れる頃
私も
肉眼で見たとして、
あなたの瞳くらいの
月を
眺めることでしょう
....
闇夜に咲く花はきれいやね、と言うお前はこんな真っ暗なところで一体何を見ているというのだ、と僕は思うけれど、そうだな、と同意する。お前は満足したようににやりと品無く笑い、また夜道を歩き出す。その足先はい ....
コンクリートの塀の上に
鳥みたいにとまって
下を見たら崖で
気づいたらもう
落ちている夢を
いや
妄想をよく見て
神経は
そんな私の頭の中に不安という
ゴミが散らかっていると警告する ....
失いかけたものを
取り戻せた。
もう少し遅ければ
失ったのかもしれない。
一瞬。
たった一瞬の判断が
失ったはずのもの。
それが
そこにあるかもしれない。
いや
あ ....
満天の星空から
こぼれ落ちた
青白き花よ
草陰に
ひっそりと
佇んでいる
それは
あなたの涙と同じく
尊い
手折ることなんて
出来ない
私は
掬うようにして
花を見つめる
青白い涙、
花に ....
旅立つキミへ
キミとボクとの道は分たれて
キミの足の向く先へ
ボクはついていけないけれど
キミがうつむいてしまった時
ボクが
ほほえみをたたえて
咲いていたいな
鋼鉄の強さが欲しかったのではない
柳のような強さが欲しかった
何もかも跳ね返す強さが欲しかったのではない
しなやかに受け流す強さが欲しかった
黒と緑
ひともとの曇
月のきざはし
忘れられても うたいつづけて
笑顔に割れた夜の下で
いたたまれずに背を向けて
ふせ目がちに風を見る花
光のなかのまばらな道 ....
喧嘩してたんこぶできた
悔しくて暴れたら
たんこぶできた
幼い頃は親戚のおばさんに抱っこしてもらって
撫でてもらったっけ
もう大人だけど
私の頭のたんこぶは
ズキ ....
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