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川沿いの道を
からんころんと下駄鳴らし
着物姿で{ルビ闊歩=かっぽ}する
5才の姪のかほちゃん
ほどけた帯紐に
つまづかないよう
後ろから追いかけて
地面に垂れた紐を持 ....
わたしの心と体というふたつは
風の息吹に包まれながら
透けた紐に結ばれたひとつです
体が体のみならば
わたしは只の人形です
心が心のみならば
わたしは只の霊魂です
....
三十年の間
一つ屋根の下ですごした
八十八の祖母が
悪性腫瘍と知ってから
街を歩いて目に映る
すべての人が
やがては空に吸い上げられる
幻の雫に見える
曇り空の果 ....
東口を出た歩道橋に
一人立つ
目の見えない
フルート吹きの奏でる
あめーじんぐぐれいすの
音色を前に
手押し車の老婆は通りすぎ
土産袋を持ったサラリーマンは通りすぎ
....
春雨の降る午後
私は一人傘を差し
無数の蕾が開き始める
桜並木の道を往く
三っつ目の信号を曲がり
学校に沿う坂を下ると
傘を差す
君の母が立っており
喪服の私は頭を ....
ある雪の日に手紙を出しに外へ出て
すべって転んで骨を折ったヨシ子さん
ケアマネージャーが入院先へ
見舞いに行ったら泣きべそで
「アタシ馬鹿よね、おほほほほ・・・」
折れた骨がく ....
休日の昼過ぎ
先月から通い始めた
自動車学校へゆくと
校内のすべての車は停車して
教習コースの道に並ぶ
紺ブレザーの教官たちが
にこやかにキャッチボールをしていた
長 ....