庭に遊び場があったころ
雨の後には水たまりが出来
蒼空を写していた
青空には雲が流れ
雲の中にぼくの顔があった
けれども
水たまりが有ると
ハンドテニスや長縄跳びが出来ない
早 ....
要らないものが多過ぎる!
下駄箱の中の履かなくなった靴
クローゼットしまい込んだ流行遅れの服
屋根裏部屋に放置された古い布団
断捨離にも体力が必要で
一日延ばしにする内に
どんどん ....
消し飛んでしまいそうな
この想いを
受け止めてくれる
熱が
そこにはなかった
冷たい水滴が頬をつたう
....
桜の花に誘われて散歩するわたしの行く手の
立ち枯れた葦の叢から飛びだした番い
ギャッと鳴いて 慌てふためき 灌木の陰に潜る雉子
間違えはしない
登校した私を小学校の玄関で
毎朝迎えて ....
あなたの声が聴こえてきます
空は美しいと知ったのは
それから間もなくのことでした
あなたの声が見えるようです
雲に隠れていても
太陽の輝きはわたしを慰めます
あなたとどうして出 ....
自分の作った檻なんて
両手を広げれば簡単に外せる
一歩前に進めばほら
檻なんて何もない
…いっしょに泣いて差し上げましょう…
からまる蔦をふりほどきながら
女は石段の脇で踞る若い僧侶の傍に偲びよって行く
立ち込めていた靄の薄い生地を開いた
かわりに一枚ほど借りてい ....
詩は自由に書かれて一向に差し支えないと思う。想像力の赴くままに飛躍している詩行もまたよいだろうし、現実の人生をなぞった詩行もまたよいだろう。だが、私はかつてひたすらフィクションの完成度を追求 ....
眠気に包まれた祈りが煙の海を泳いでいる
硝子越しに並んだ雑誌の女たち
未だ馴れない携帯メール
たどたどしい指先
男性誌と女性誌では
同じ美人でも漂う匂いが違っている
雄と ....
背枕を省みては どんよりと重く
降りそうで降れない燃える蝋の雲
瀕死の猫が
)はあはあと
くふくふと 、来
血(らいち)に染まれば息は幽すかな断脈
もたれることもなく
....
みずからの
水だけで
果実がジャムになる
という方角を
みつめている
わたしという誰か
くつくつと
やがて
ぐつぐつと
そうして
やがて
なにも言わなくなる
鍋だけが焦げてゆく ....
えっ?そんな・・
僕がみんなの前で
別れの挨拶をしているとき
泣いているきみに気づいた
他には誰もいなかった
「俺、あの娘に金貸してたっけか?」
その日は特に何もなかった
翌 ....
僕の歩速はアンダンテ
歩幅はきみを抱きしめるときの喜び
世界はストーンサークル
星の影を測る物差し
僕の耳はユーフォニューム
B♭で風の音を聴く貝殻
きみは狂った時計が時を刻む ....
春になると
淋しい木々の先に
白木蓮の{ルビ灯=あかり}が点る
ほんのりと明るい白い花は
どんよりした心を照らしてくれるようで
ほっと心が温かくなる
こんなふうに心が晴れない日は特 ....
オルゴールの奏でる短調の流れの中で僕らは出会った。
静かな避暑地の美術館に君の麦藁帽子は雄弁で
僕の黒髪に風を寄越した。
グランドテラスでは老夫婦の会話の隙間から優しいカモミールティーの ....
友人との親愛に満ちた深い交わり
職場での同じ目的を目指した連帯
花も木もすべては私の感官を刺激し
口から溢れ出す言葉が止まらない
これが一つの世界だ
だがその世界だけでなく
....
桜の花は満開で 君は一つの時代を卒業した。
休むまもなく 新しい時代はめぐる。
心の準備は出来たかい?
いま少しだけ 幼い君でいてもいいんだよ。
健気に咲いている花を見て君は ....
白い箱の中に眠る君は
桜の化身
雨に濡れて
君がひらひら
落ちてゆく
白い箱の下には
僕がいて
僕もひらひら
落ちてゆく
あらゆるところ
あらゆるときで
君は ....
「みんなが俺を蹴りやがる
逃げても逃げても追って来る
囲まれては蹴りまくられて
仕舞には頭突きでふっとばされて
時には拳で殴られて
そんな毎日 地獄の日々―― 」
「みんなが私に夢 ....
空き箱を捨てようとすると
捨てないでと
声がする
ほうら
よく見て
案外魅力的な箱でしょう
中身がなくなったからって
存在価値がなくなったって
ことじゃないのよ
むしろ
そこか ....
とうめい が
好きですよ
漆黒も
好きですよ
漆黒が とうめいな日が 好きなのです
玄武の闇漆黒の岩石の中でケイセキは ちかっと 輝いて
その輝きは あまりに ちいさいので ....
あたしは誰とも
共感なんてしたことが無い
本当は
誰にも同情なんてしていない
カラスの群れの中に
カモメが迷い込んで
鳩の群れの中に
インコが紛れ込んで
周りの誰とも違う歌 ....
様々な波長のことばに耳を傾ける
舞い散る花びらのように光をもとめて
あるいは影に紛れてかたちを失ってゆくものたちよ
羽化して浮揚する繊細な翅を持つ蜉蝣のように
永い水底の想いををうたにして ....
ちいさな手が
誰に習ったのか
頭をなでる
背中をさする
「おかあさん、だいじょうぶ?」
いつの間に
こんなに上手に
しゃべれるように
なったのだろう
返事を忘れて
見つ ....
傷心の時
人は季節を忘れる
今がいつなのか
ここが何処なのか
茫然として
うわの空
それでも季節は巡る
新しい風が吹いて
花々が咲き
陽の光は注ぐ
あなたの肩越しに
滔々 ....
華々しく出航したはずの
船の羅針盤は
いつの間にか壊れて
勿体つけて差し出された
六つ折の海図は
ほとんどが嘘っぱちで
最初は威勢が良かった
スクリューには
得体の知れない ....
その男は
幾つも電球を並べた灯りの下で
ぼくの胸を切り開き不機嫌な心臓を取り出した
心臓の中に豚を入れ調子よく動かそうというのだ
更に男は心臓のあった空洞を覗き込み
ぼくさえ知らない潜み物 ....
【龍人】
滑らかに曲がって
緩やかに曲がって
何時までも曲がって
何処までも曲がって
掌の記憶の球体
見覚えのある顔
球体を眺める
目の奥が笑う
掌の人の形
見覚えのある顔 ....
さっき買ったばかりの
ペチュニアの苗にあった
つぼみが
うらうらとした
ひなたの中で
もう咲きかけている
そうやって
ほどけ始めた
濃紫のはなびらは
見せかけより何倍も
ふくら ....
明日も
私をきらいな人が
たくさんいてほしいと願う夜
あなたの詩には
共感なんてできないし
空行で破裂する
思わせぶりな言葉なんて
雑すぎて
丁寧すぎて
何も生まれないし何も死なない ....
1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 32 33 34 35 36 37 38 39 40 41 42 43 44 45 46 47 48 49 50 51 52 53 54 55 56 57 58 59 60 61 62 63 64 65 66 67 68 69 70 71 72 73 74 75 76 77 78 79