すべてのおすすめ
....
車窓がくもって何者かが問いかける
移民の悲しみ似た淡くはかないものだ
いくつかの希望を抱いて死んでいった
若者の中の一つの宇宙だ
車窓がくもって見えていたものが歪む
ひときれのパンに空い ....
蟻群れてダリの世界を解体す
キリコの街に少女失踪月見草
マグリットの青空の下に暗き闇
病院の最上階の病室の
眠れぬ夜に少年は
夢で作った絵具で
誰も知らない絵を描く
空は大きなキャンバスだ
ひとりでさびしい少年は
空にたくさんの友達を描きました
父親を知らない少年は
....
メーデー歌泥つく靴で地をならし
いもうとの髪梳く夜や沈丁花
手の平に青空統べて修司の忌
開け放たれた窓から
夜風がカーテンを揺らし
月の光がこぼれだす
少女の眠れぬ夜はするどく
闇の中へと切りこんでいく
少女がひとさし指で
空をなぞるように
星の数をかぞえている
....
青空にわれをおさめし帽子舞ふ故郷はいつもわれを拒まづ
街灯に蛾はなに求め集まれり夢なき高校生の分身
マッチの火点けて拡がる夕暮れに未来に逆らひ運河薔薇色
去りがたき旧家にひそむ精霊も君もわが青春の影とす
穂草は種を密かに飛ばすイエスよりマリア若きをその罰として
満天の星は人の不幸ならむと決めつけ孤児はおのれなぐさむ
巴里の色を僕はしらない
おばあちゃんは
それは淡い青い色だと言った
夜が乾いていく
するとセーヌ川がたちまち
空に吸いこまれていくのだそうだ
巴里の音を僕はしらない
おばあちゃんは
....
午後のゆるやかな
時間の流れる公園で
片隅のベンチにもたれつつ
ふと洩らしたため息が
小さな小さな船になり
砂場を蒼い海として
航海に出る
僕の小さな小さな船は
とても壊れやすくで ....
雨の日に
美術館の裸婦像は
艶やかに
やがて本当の姿を見せるだろう
ぼくも同じだ
ぼくの想いは風に乗り
雲と流れて地球儀の裏側の
ひとつの地平となるだろう
暖められた卵のように
....