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部屋の隅で金を拾い
北海道にスキーにゆく
大きな河の中で溺れるのは
明日の昼過ぎだろう
隣の猫の眼にも百年前の
魚が泳いでいるのが見える
俺の顔も猫になって
阿武隈川の清流で溺れ ....
突如、ファンファーレが鳴り響き、
歳月という歳月が、打ちひしがれた記憶が
―それは最後の葉を落とした冬の木々のように
私を丸裸にした。とはいえ、船長に任命された私は
真っ黒なボロノジャケッ ....
一人ぼっちで 山小屋で過ごす 夜ってやつは恐ろしい。
眠りにつくまであと少し。そこでまた再開するように
口火を切ったのは流れ星。真っ先に迎撃されたのは
真っ赤な唇―、吐き出された白い吐息は男 ....
セミの抜け殻を
たくさん集めて帰った
何となく
母にほめてもらえる気がした
母はパズルのピースが足りない
と探していた
父は受話器を握り
そこをなんとかお願いします
そう繰り返 ....
気の向くままに屋根を突き破って、
固い床の上で、くるくると回り続ける隕石から
拡がる光が部屋の中を照らしている。
キキュロプスの瞳は、世紀末を迎えた
ミラーボールのようで、口から泡を吹 ....
おまえが
おまえの母の指を握りながら
泣いていたので
どうしたのか聞くと
おまえは
母の左手の薬指の
銀色の指環を
指ごと握りながら
これが欲しいと
言って
....
「風は手で漕ぐよりも速い。」
と聞いていたが、それよりも
はるか先を行っていた。
小川を下る空のボートは―
かつて、ルーレットに記された言葉のみを使って
死ぬまで日記を書いたという
狂人た ....
そして狼は一頭で、
舗装された道路を、泥で汚れた足で歩き、
駅からマンションが並ぶ踏切を抜け、
渋谷までの国道246号を黄色信号で渡る。
曇り空は湿った風。
吠えるべき月は、ない。
爪 ....
たとえば真夜中に、テーブルの上で
作りかけのパズルを再開する老人のように、
未完成であることだけが唯一の完成形であると
―仮定できないだろうか?
オーディオから流れている夜想曲を。
棚を埋 ....
洗い立てのかるい
ネルのシャツにでも着替えて
家を出て行けばいい
そして袖口を泥で汚したなら
帰ってくればいい
風に洗われながら
道端の小石とおしゃべりしながら
....
赤道直下の交差点を往来する、プラスとマイナス。
鉢合わせとなった影像から、流血沙汰の騒ぎへ。
切断面から溢れる磁力を嗅ぎ付け現れたのは、
若い詩人のセーラー。交差点の真ん中で、
―バッバッバッ ....
耳という耳を串刺しにして歩く避雷針。
レコードの針。世界を夕暮れにするための音楽。
夕闇の中で僕は、蝙蝠と一緒に飛び回る
真っ白な一羽のニワトリだった。梁から梁へ
飛びうつる大工のよ ....
パイロットサングラスを頭にのせた、
巫女たちが夢に見る黙示録―
蜘蛛の巣一つない大広間。シャンデリアの上、
タキシード姿でシルクの手袋を咥えた燕が
フィアンセの現れる柱時計の 時が打たれる ....
感動的だ
ナイロビのスラムの何百万人のなかから
一人の少年を選んで
持って回った親和力(テレビカメラ)で気安くなり
何日間もその不幸を見続けたあげく
「君は今幸せかい?」 ....
ボール紙の小さな箱が濡れしおれている
白地に赤い矩形を散らした面は泥じみている
その上で蟻の細い行列が幾筋も
行きつ戻りつし交錯しあっている
つややかに黒い頭蓋のうちの
....
やまびとの散文詩―断片4
緑色の太陽が沈まない夜が、軋み、傾き、唸りを上げて
動揺する、わたしたちの長い旅は続いた。
黄金を隠し持つ禿鷲が棲む不毛の大地は、ときに、わざわざと
道を次々と造 ....
退屈なのは自分のせい――と、かつて僕らは
それを殴っていた。うとうと眠りかけた時間を
時計のなかで凍っていく時間を、叩き起こすように。
おかげで今じゃ、僕らの時計はパンチドランク。
秒針は、 ....
実際の所あれは
鴉のようにも見えたし
人間のようにも見えた
真冬の朝の
まだ明けきらぬうちに
紫色の空を
私たちは見上げていた
凝固につぐ凝固
雪よりも白く美しい
骨を包んで ....
今日コンビニのおつりでもらった
平成17年産まれの100円玉は
驚くほど輝いていた
昨日道端で拾った
昭和産まれの100円玉は
それが世の常だというように
薄汚れていて
....
乾いた見世物小屋で
手にじっとりと重さを感じる
白い蛇が巻きついたこの拳
スポットライトに魅せられた
シマウマがいるそのゴムの上で
上 でこ の瞬間 だ
ファースト!あいつの右 ....
追われてゆく、陽の速度に倣って、大気は燃えている。すべての失われた魂を鎮める夏。その高温へと連れて行かれる。靴の紐がほどけている間に、素早く足裏をさらけ出し、女の後ろ髪がほどかれる間に、どうにかいまを ....
女が化粧している
裸の背中を私に晒して
射抜くような眼で
鏡に映し出した己を見る
内にある存在へ
女の手は問いながら作用する
ただの身だしなみでも
誰かに見せるためでもなく
太 ....
昼が過ぎる。真夏日が待機した窓を開いた。
半裸な都会の露出度は、夕方に足を突っ込んでいる。
ベランダから返り討ちをしてやろうと、長袖に手をかけてやめた。
―ソファーの色、体毛よりも淡い、素肌 ....
仄暗い公園のベンチで
みかんの皮を食べろと言われている老人が
喜んでと言って頬張っていたのは新聞紙
これでいいですかとにこにこしながら
鳩の目で少年たちを睨みつける
ぽおっぽっぽっぽ ぽ ....
冬には空が降下する
みんな誰も見てないし
奪えるものがあるなら
私から奪って構わない
(雪霧の向こうに浮かぶ
あれは管制塔の光源だ
低い轟音を響かせて
離陸す ....
揺れている。揺れている船の上、喉が渇くので、ペットボトルの口を開ける。ミネラルウォーターを飲む。
(ひたすら漂いたい気分だ)
わたしは退院後、船で島に向かっていた。誰もいないところに行ってみ ....
あなたの子供は駈けていきました
あなたの急を知らせに
道の向こうの
そのまた向こうまで
私が知らない間に
他の多くの大人たちが
それぞれの世界の片隅で
何も変えられないでいる間に
あな ....
聖地の方角へ向けて祈る
巡礼者のような面持ちで
私は此処に立っていた
星たちの第五待合室
そこにある伝言板に
私が一行書き加えると
誰かが四行詩で返信する
....
トラックが音像を抜けていく
窓の外の道路はもう薄く白色で
ゴゴと過ぎていくやわらかな午後に
雨のあとに、やってきて
「やさしいよ、やさしいよ」と
トタン屋根の膝枕で眠る
記憶が脱ぎ捨て ....
冬は好きではない。失業してから外出が減った。TVを見るか寝ているかだけで、二ヶ月が過ぎた。TVでマーメイド海岸のCMを何度も見る。海面から顔を出し泳ぐマーメイドの姿。面接や職安にも出かけるが、就職先 ....
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