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太陽は旅人に微笑んだ
旅人は異国の地の砂を一掬い
病院で眠っている少女の枕もとに置いた
サラリーマンは缶コーヒーを片手に地面を見る
いつの時代だって影は黒い
グループから追われた女子高生 ....
1.永遠の序章
(総論)
一人の少女が白い股から、鮮血を流してゆく、
夕暮れに、
今日も一つの真珠を、老女は丁寧に外してゆく。
それは来るべき季節への練習として、
周到に用意されて ....
引っ越したアパートは
薬屋の二階だった
辺りには小さな商店しかなかったが
近くに大きな川が流れていて
君の心を支えながら
よく土手を歩いた
神社には大きな桜の樹があって
薄紅の季節を ....
夢から覚めたその朝は
どんな夢を見たのか
覚えてないけれど
どこかにまだその夢が
自分の中にそっとある
きっと安らぎのある
やさしい夢だったに違いない
夢と朝のつながりが
頭の中と ....
日焼けした かき氷屋の主人の
肩から流れ落ちる汗が
石床に着地すると
閉じ込められたアンモナイト等が
ゆっくりと 泳ぎ出す
冷たい水しぶきを追いかけ
飛び回る子犬の様子を伺いながら
....
膨らむ桃色の空を背に
途切れる走査線
建てこんだ古い家屋のすき間を
心地よい轟音にまかせて
走り抜ける列車が
壊れた映写機のように
飛びだす光の窓
焼き魚のにおいに
回転しなが ....
路地
曲がり角や
塀の隙間
溢れて、揺れて
透明な線を残す
そんな隙間に隠れて
今日をやりすごしている
等しいものを
等しいとして
アスファルトに
等間隔に並べられ ....
水面にゆがむ月よ
滑らかならぬ蒼白い顔は
私を待っていたのでしょうか
それとも見送ってくれるのでしょうか
足を止めると
あなたはきらりと
涙を放ったように見えましたが
驕りだったよう ....
さびれた歩道橋の上で
夏を見上げると
空、空
本当に海まで続いているのだろうか
この橋の下を流れる車の群れが
緩やかな河口付近の川だったらいい
時折陽射しに煌めくヘルメットが
....
正そうか
絶望だとも思ったあの感情の中に
糺そうか
舌鋒だとも捉えたあの感情の中に
ただ そうか
切望だとも感じたあの感情の中の
虚言で湛えた虚像を断ち切り
質して
....
三日月を食べた夜は
騒騒と 潮騒が耳鳴りのようで
蹲る僕を灰色の目が見ていた
薄暗い闇の中で浅い海を畏れていた
三日月を呑み込んだまま
灯台の灯りを見続けていたけど
胃の中で、光が ....
あの子の瞳は遠くの方を見つめていた
見つめ合ってはいたけれど
その黒は、星が流れる広大な虚空よりも深く
氷に閉じ込められたまま、燃え上がるような黒だった…
その炎に触れてしまったら ....
炎の塊がどんどん大きくなっていく
僕の心もどんどん大きくなっていく
知らず知らず僕は少しずつ大人になっていった
まだ子どものままでいたい
ピーターパンシンドロームでもい ....
ファーストペンギンは
勇気があるから真っ先に
海に飛び込むんじゃないよ
後ろから迫ってくる
他のペンギンたちに押し出されて
ぽちゃん
こんな感じ
そう教えて
プールに飛び込んだ君を ....
(でっかいのが、死んだ。)
風殺すようないかり肩に丸刈りの白髪頭乗せて来るのは あれは
ロブス 漁師で 工房の隣の教会の管理人だ
逆光でも分かる お調子者の いつものいたずら ....
やがて
夕闇に閉ざされる海の
光る航跡を追いかけて
白い波間に漂う一人ぼっち
私の貝殻は声もなく
昨日は切なさを
今日は愛おしさを
明後日は狂おしさを
一枚
また一枚
引き剥いだ心から溢れ出る
あかい
あかい溶液は
あなたの眺める空を
あなたの愛でる花を
染めぬいてくれるでしょ ....
前を歩く君に声が掛けられない
あと半歩踏み出したなら
君に並んで歩く事も
出来るだろうに
そんな想いを続けて
君の少し後ろを追いかける
届かない想い
届かない声
少しうつむきな ....
夜明けの窓は孔雀色
今年もまたうたうように
アガパンサスが咲いている
七月はわたしの中で
いちばん甘く実る果実
君はいつかそれを 別の名前で
呼んだかもしれない
少しずつ風がうご ....
窓を閉め切った真夏日に
枕に
むせ返る香水の薄靄に
顔をうずめて
真っ白な交わりを
まだ梅雨は帰らない
降りそそぐ
部屋中のアクロソーム
その先体構造に侵されて
私、 ....
彼方からの気流にのって 届いたそれを
あのひとは
夏だと言った
わたしにとって
わたしの知らない、どこか
遠い場所で あのひとが
笑ったり、泣いたり、しているということは
あ ....
私はとても小さいので
海を見れば
海でいっぱいになってしまう
私はとても小さいので
空を見れば
空でいっぱいになってしまう
私はとても小さいので
風を匂えば
風で ....