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木は黙っているから好きだ
木は歩いたり走ったりしないから好きだ
木は愛とか正義とかわめかないから好きだ

ほんとうにそうか
ほんとうにそうなのか

見る人が見たら
木は囁いて ....
蛇蝎の唄
鏡にむかって唱える


おのれ 醜(シュウ)

どろあしで ふみにじる
鏡に 流るる どろえきのしたに
ちぬらるる

おのれ 蛇蝎の族(ウカラ)
韜晦を重ね
はや と ....
いやな唄


あさ八時
ゆうべの夢が
電車のドアにすべりこみ
ぼくらに歌ういやな唄
「ねむたいか おい ねむたいか
眠りたいのか たくないか」
ああいやだ おおいやだ
眠りたくても ....
栗の木

そのとき
ジョージ・オーエルの『一九八四年』を読んだばかりの彼女が云った
「お店の名前は栗の木がいいわ」
ぼくはグレアム・グリーンのスパイ小説『密使』に夢中になっていた
 「いや ....
1.田村隆一詩集

四千の日と夜

一篇の詩が生れるためには、
われわれは殺さなければならない
多くのものを殺さなければならない
多くの愛するものを射殺し、暗殺し、毒殺するのだ

見 ....
0.序論

 詩は言葉の信用性を失墜させていないだろうか。詩は、一方で、表現主体の内面を最も率直に表現する媒体として使用され、もう一方で、読者にとって美しくなければならないという要求のために真実を ....
0.はじめに

 詩人が、詩を知らない友人に詩を紹介する。さて、よくありそうなこの風景の中では、いったい何が行われているのだろうか?
 まず、詩人は詩には価値があると考えているだろう。ではなぜ、 ....
手は内側を流れる音楽を運動に変換して紙の上に文字としてしたためる。紙に落ちる手の影は皮膚の内側の湿潤で深く染め上げられている。私は友に手紙を書いているのだ。友は声として仕草として視線として輪郭として色 ....  高岡修「屍姦の都市論」(思潮社、二〇〇五年)は、詩であると同時に、「都市論」とあるように論でもある。では、それはどのような意味で論であり、それが同時に詩であることによって何が実現されているか。

 ....
存在の下痢のかなたで光化する睡眠の数々。赤い睡眠はいずれ被殺者の流す血として大地を吸収する。宇宙の移住のはしくれのタンポポが、葉の代わりにナイフで飾られる。ビルの鉄筋は爆薬であり、圧力の襞に生命を逃が ....  私は卵について語りたい。だが卵について語ろうとするとき、私は古傷をえぐられるような心の痛みを感じ、私の心の流れは、卵という言葉から割れ落ちた無数の破片によって堰き止められる。私はこの透明で広々とした .... 2.現代詩の記号論的分析



2.1.記号論の基本

 表現が内容を「意味する」という関係が成立しているとき、その表現はその内容の「記号(サイン)」であるという。たとえば「猿」という言葉 ....
1.序論

 本稿では、現代詩を記号論的に分析しようと思う。だが、そもそもそのような理論的分析には意義があるのだろうか。理論的分析に対するひとつの批判として詩学屍体解剖説を取り上げ、それがどのよう ....
■漫才と詩

 前々から思っていたのだが、漫才もしくはお笑いと多くの詩は似ている。「笑い所」と「感銘を与える表現」が対応しているのだ。芸人は観客を笑わせるために、あの手この手を使う。詩人も、読者に ....
http://po-m.com/forum/showdoc.php?did=122465

 詩人は詩を書き始めるにあたって、一つの静寂、一つの待機状態に身を置く。詩人が詩の発端をつかもうとすると ....
    くびする糸者
     冷れみて    児
かなさり住に
    おへよっておへよって
              らびが爺ね

東北新幹線の空洞を貫く抒情性を少しも吸収することが ....


西野が平原を歩いていると、前方に小さな小屋が見えた。小屋には東西南北に四つのドアがあった。

西野は南側のドアから入ろうとしたが、小屋の中には入ることができず、そのまま東側のドアから出て ....
少年の庭に咲かれた一輪の花
匂われて
光られて
やがて散られてゆく
そんな花の花
の花の内側を醒ましてゆく
夏の繊毛
角膜
破瓜
少年は不安によって
空間を把握する
不安の立面に ....
展示された日々にひとつひとつ形をあたえてゆくと、球のまざった菱形がひとつだけ余ってしまう。菱形は情念に光の島を落として、情念は菱形を斜めに転調させる。君はこの菱形に所有されていたのか。

君の肺は ....
人の背中が街の青い空気に裂け目を入れている。人の一部は気化してその裂け目を出入りする。裂け目の奥では昼めいた祭壇が、硬い光に包み返されている。祭壇の上では討たれた臓器が、自らの内部をけわしく循環してい .... 「樹を」
折れてゆく私の直線をめぐって溶け出す樹々、の泳ぐべき海の直線。泳ぐのは海、ひらくのは海。樹の斜線は海を分解して新しい樹々の斜線を生産する。いくつもの遠さに囲まれながら樹はかわくのをやめない ....
 私には自分が岩であった頃の記憶がない。だが、確かに私はかつて岩であったのだ。恐らく私は、人の欲望に汚染されることのない高山の頂上付近で、時折空から降ってくる虚無の波を一身に集めていたと思うのだ。ある .... ひとつひとつ、はげしい輪廻のあとに、夜は摘み取られてゆく。現世の庭にしどけなく積み重ねられた夜の鏡像は、大地の核に至るまで、ことごとく破壊されている。光は輝くことをやめた。色彩はひろがることをやめた。 ....  月が盲目であることを知るのに私は二十年の歳月を要した。私にとって、月はあらゆる意味で眼であった。月から伸びる湿った神経束は世界の絶望へと接続していて、世界の絶望は、半ば狂いながら老犬の飢えと私の衰弱 .... 非世界から吐き出された器としての私性
一滴の光でさえも顔料にして
熟したひだの内側へと塗り込んでゆく
ゆらめく環としての仮性植物
突起した肉からしたたる千草色の液
私は世界のあらゆる空に押し ....
死するものの輝きがひとつの歪んだ戦慄のなかで遠景をひろげている、過去から届くさかだつ呼び声は次第に熱化して僕から幽石を焼き切ってしまう、僕は雨の中で生まれたのだろうかあるいは海の中であるいは問うことの .... ――切り立ってごらんなさい。つまさきで。手の先を。あなたの手のひらには死の網が浮き出ている、巻雲の申し子だ、耳の中で変色する早苗の葉音を頼りに、内園からつなぎとめておくのです。私はおさない被告人、砕け .... はじまりのない海は、飽くことなく月光を滅ぼし続けた。海の窓はいつでも閉ざされていて、裂き傷のようなものが表面をいろどるだけだ。海の上では乾いた街の幻影が旋転していて、槍のような水柱を呼ぶ。街は律動する .... 三本目の脚の脈打ちを性器に感じながら、夜はたちうかぶ精気たちを無数の舌でささえてゆく。いまだ散開しつづける空の屍骸が夜のなめらかな声帯をたきつけて、金属のすりあう音をたてさせている。人と人との間には巨 .... ――――――――――――――――――――
昔日の思想は僕の手に形をあたえる。指先を
くるむほとびた皮膜に沙漠のイマージュをな
がしこむと、僕の手指は草の葉をつまむこと
ができる。内臓の液化して ....
岡部淳太郎さんの葉leafさんおすすめリスト(37)
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