料理人にも退屈は平等に来る
挨拶が照れくさくて苦手だ
やり残しの仕事が不眠へと誘う
脂っこい地獄の脇を通る
嫌なものから解放されない
プラネタリウムでブラックホールを探す
懐かしい歌から逃げおゝせる
過去の退屈は今の郷愁
体育館の声に耳そばだてゝ
夕立とあの雲の行方を誰が知ろう
シムシティの原発でさえメルトダウンする
雪は降れどもいそいそ出かける
夕焼けの鐘もう帰ろうと呼んでいる
元気な街の駅へバスで行く
雨に触れ雨だれに触れ
スリッパの裏側に張り付いたセロテープを剥がす
他人の悩みが降りかゝらぬよう歩み遅め
酔っ払っている時間が勿体ない
経験に従い今日は家に帰る
部屋を出て溜息をつく
男だの女だのにまだ拘るのか
湯船に片足だけ入る
替え玉の前にスープを飲みきる
魅力に欠ける者は己に似ている
二人並んで牛丼を食べた雨の深夜
退屈に任せ明日の掃除をする
怖くて電話ができない
和やかな時が知らぬうちに訪れる
思い込みで現実逃避
他人の鼻歌に苛立つ
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