なのに
たゆたうように月は光りつづけ
あきもせず夜空を見上げる
あなたの横顔が冷たい
聴こえるはずのない
化鳥の鳴きごえがした
なにかを奪い去る甲高い意志
その悲しみを ....
雲の切れ間から
青が光って覗いている
俺はくたびれ脱力して
道端に腰掛けている
わけの分からない宣伝カーが
ゆっくりと通り過ぎて行く
ひんやりと動かない空気
傾きかけた太陽
何も変わら ....
遠い声を聞いた 海の底のようなはるかな声だ
耳に残る 今はおぼろげな記憶のようだと
貝殻の奥にある秘密の旋律のようだと
遠い道を歩いて抱いてしまった憧れに逢いに行く
人々が集って来る ....
優しさの、
止まらない疾走に
目が回る
こころの上で掬い取られた
優しさはまるで
枯れ果てて茶色の種をバラまくまえの
向日葵の花びらを枯らした姿で
花としては終わり果ててい ....
いつぽんの川がながれてゐる。
川べりの道は夏枯れた草に覆はれてゐる。
川はゆつたりと蛇行して その先はうつすらと 野のはてにきえ
太古の記憶へとつづいてゐる と村びとたち ....
1
枯れた桜の木のトンネルの下を歩く
破れ果てた網戸の運命のような青空の下
じぃ〜ん、じぃ〜ぃんと
死ぬまえの蚊のような、
けがれた沼の精のような、
虫がとんでいる。
青 ....
うつくしいひとたちに遇ひ
うつくしいはなしを聴きました
空はたかく 澄んでゐました
かなしみはもう とほくにありました
よろこびは すぐそばに そして
手のとどか ....
スポーツは
決して
正々堂々としたものとは
限らないということが
次々暴露されている
メダルの裏には
人間のくろぐろとした欲望が
張りついている
枯れ葉が欲しい
かさかさと乾いた葉っぱを
この手の平に重ねて砕いて
撒き散らしたい
パーッと撒き散らして
グルグルと円を描いて
なにかを召喚でもしようかしら
鬼が出るか蛇が出 ....
夕立が降るかと
期待していた
どうしてかは
分からないけれど
激しい俄雨が
欲しかったみたいだ
天気予報など
気にもしないけれど
雨の匂いが
充満していた
それはきっと
自分 ....
白いりんごをのせた皿に薄陽がさしてゐる。
月をたべた少女が硝子の洗面器にそれをもどした。
日が暮れる。わづかに年老いてゆく。
適当に引っ張り出したTシャツから
今は使っていない柔軟剤の匂いがする
どうせ乾いていく通り雨の先
住宅街の暗闇でこっそりと線香花火に火をつけて
笑い合っているうちにぽとりと落ちた
光の ....
この体の表面
内部を包む皮膚には、呼吸をするために必要不可欠
微細な穴
他にも穴、穴、穴
匂いを嗅ぐ鼻
音を捉える耳
飲食の為に用意された口には
人間の意思や感情を外部に伝達するため ....
恐竜の高さのビルの二階階段踊り場で
二段階右折を見降ろしていることに気づく
早朝さんざめく目眩(めまい)の驟雨は
作られた樹々の明日を生かそうとする
寂しい風がゆったり ....
そんなに
近寄られると
嬉しいような
苦しいようで
皮を剥かれた心臓が
脈打つたび
ルナティックに叫び出しそうな
ワタシを
ワタシの中に
ワタシが見つけるのです
bye-bye ....
鍛えた体と星を比べると
熱い胸の音が肌に届いて
瞬きはいつか
消えてなくなる
朝だろうか
雨だろうか
色は鮮やかに記憶を結び
命は穏やかに鼓動を早め
見えない時間を
....
一日一日が、癌との闘い。
一日一日が、統合失調症との闘い。
一日一日が、自己との闘い。
一日一日が、神仏への祈りの誓い。
一日一日が、新たなる自己との出会いの旅路
一日一 ....
照明に
濡れた花びら目を伏せて
選んでほしいし、忘れてほしい
恋しくて
声を凍らす粉雪に、
降られた鼓動は、自由を奪われ
純粋を
このワンピースに飾りつけ
まるで地吹雪 ....
何者かに肩叩かれて目が覚める
誰も居ない夜闇に腐臭が漂って
布団のなか嫌な汗かき死を拭う
背後霊の手は長く
千手観音よりも多い
ただ
多ければ良いという
ものでも ない
人間の役に立つのは 人間の手と同じ数
つまり 二本の手がもっとも便利
背後霊にもイカのような触腕がある ....
私はあなたみたいになりたいの、
っていうと、あなた、
うつむいて、笑ってたね?
何を言われても、黙って、笑って
芯はつよくって
人をあたたかい気持ちにしてくれる、
あなたの言葉 ....
僕のちいさな時間をかえしてほしいんだ
双眼望遠鏡に閉じ込められたほんの僅かな視差を
星雲の光年には追いつけやしないけれど
僕たちは自分のひかりの速度をもっている
パラダイスには遠いが自 ....
月に行く夢に沈んで死の予感
漆黒に光る波間に浮かぶ声
枯れ葉舞う夏曇りの空の下
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