小さな神様は二人いて、一度現れて
そして影となり、二度と現れなくなった
とてもむかしから飼っている犬がいる
夜は犬小屋で静かにしている
死んだような影を落として
鳴 ....
太陽がじっと私を見つめても 私はじっと自分の影を見つめる
そして太陽が去った後 夜の空を仰ぎ
鏡ごしに彼をじっと見つめるのだ
卑怯者だから
最近ヤモリは現れなくなった
夜のはめ殺しの天窓に映させている
流線形のシルエットが好きだった
イモリだったかもしれない
それとも風に導かれて降り立った
小さな神様だったのかもしれない
便宜 ....
(自覚は棄てるから、かまわないで)
爪を刺す
その心臓に艶めかしい
傷つけてから別れてあげるよ
手を出したい
憧れの人にはお酒より
大事な愛があったのでしたよ
凍りつ ....
幸せだなって思いは誰のもの?
自分のものだよね。
あの野郎!って怒りは相手のもの?
いえいえ自分のもの。
....
先ずは
あいうえお作文でもやってみなさい
あ、浅間山荘で銃撃戦の過激派が
い、イスラム国に加わろうとして
う、海を渡ったら
え、エクアドルに着いてしまい
お、驚いた
か、革命を目 ....
ああ 春の匂いがする
ああ なんて孤独なんだろう
ああ ひたすらに歩み進む
命、息吹き
命、育ち
命、枯れ果て
底無き宇宙が開くもの
ああ なんて指先の温かい
ああ 春に湧 ....
ひとつだけ伝えるなら
あなたに何を
朝のまぶしさか
夜のしずけさか
日曜のあきらめと
やすらぎか
風のつめたさか
空のはるかさか
言葉のたよりなさと
たのもしさか
大切 ....
場所を変えても同じ
人を入れ替えても同じ
自分が
動かなければ
世界は変わらない
いつもなんとなく突っ立って
ああ狭いなって
言ってるだけだから
私は
雲に
貝殻の内側みたいな光の
虹が
なんど見ても映っている
なぜ
初心を忘れてしまいそうになるくらいの
たくさんの金が毎月入ってきている
服や靴、食事やタ ....
枯れてゆく冬に名前はなく
キャベツ畑の片隅で枯れてゆく草花を
墓標にしても誰もみるものはいない
ただ今日一日を生き抜くことが
大切なんだと、うつむきがちに言う人に
ぼくは沈黙でこたえる、 ....
薄暗い影の縁に
取り込まれて
居た、
なんだったかな
何処だったかな
宇宙の窪みに
休らって
然るべき場所に確保され
ふんわりと明るみ目覚めた
午前二時半
薄暗い影の縁に
わ ....
雨音は
考える時を与え
立ち止まる街の
空気を洗う
映画館で投げた
ポップコーンや
最後まで
続かなかった言葉に
もう一度はない
そういう覚悟で
この瞬間を
生きているの ....
私の光だった
あなたは空をみつめて泣いていた
世界はひとつだけ私に意地悪をして
彼女の記憶のいくつかを
ブラックジーンズのシミといっしょに
手洗いで消し去ってしまった
私は痛い寒さ ....
掻きむしりたいほどのこの感情は
時間が忘れさせてくれることもなく
この心の底でいつまでもくすぶる
手のひらの痒みが消えないのと同じで
痒みを忘れることはあっても
またいつかやって来る
....
夢で壊したおもちゃのおうち
派手にこぼしたコーヒー
冷たい染み
広げた蝶みたい
でっかい毛糸のジャンパー
一回無くしたマフラー
消えない染み
骨盤の影みたい
はじめて足を確かめて気 ....
鈴木課長の席に
アリクイが座っていた
同僚たちは
あれ、と思ったが
それが課長の本心なのかな、と
それぞれの仕事に戻る
仕事は終わらない
窓の外では
初春の風が
ビ ....
逢いに、飢えているのか。
冬の間、まるで導火線の火花を撒き散らし
恋心を待ち続ける歌を歌うのか。
水平線の朝日の静かだがゴシックで
低く刻まれる音がゆらぎながら、ゴゴゴゴゴ ....
眩しい太陽が見たい
強い陽射しが
暗い空も
澱んだ雲も
冷たい風もいらない
横殴りの雨や
蒼の炎を放つ月も
打ち消すほどの
太陽が見たい
空気は冷たいままでいい
眩しい太陽 ....
風の種を、冬に播き、夏、嵐を刈り入れる。この{ルビ平原=ひらはら}はまるで、ユトランドの牧景の様に、野を、素朴の音が渡り、農人達が、{ルビ獲入=とりいれ}の厳かな儀式を行う。晩鐘色に田の覆われる秋、 ....
締切があるから、
今取り組んでいる作品と
より深く向き合えて
より素晴らしい表現を生み出せるように
人生の終わりを悟れば、
今目の前にいる人と
より深く向き合えて
少しは優しい人間 ....
哀しみにもみくちゃにされて
いつの間にかこんな所に立っていた
私は風
一つ一つの感情を確かめもせず
時の流れへと身をゆだねてしまう
私の人生は
私のものだから
責任をもって
幸せに ....
「遠くへ行っちゃダメよ」
「五時までには帰ってきなさい」
生半可に返事をして遊びに出掛けて以来
五時が訪れることはなく
あたしはスイカの横で蒸し暑い砂浜に埋まっている
あたしとママを繋ぐ ....
夕焼けが生まれる音を
僕は確かに聴いたんだ
君という名前の音楽が
呆れた顔で笑っている
暗い部屋で
{ルビ胡坐=あぐら}をかいている
私の上に
?
が
ひとつ
浮かんでいる
なぜ人間は
言葉を語り
言葉に悩み
言葉に{ルビ温=ぬく}もる
のか
た ....
朝起きると
キッチンテーブルに
黄色いボタンが
みっつ置いてある
下の娘が
さいほうに
使うのだという
黄色いボタンは
まん丸い目と口で
ひよこみたいに ....
紙封筒に
足を
すべり込ませる
乾いたシーツのように
こもる体温
あるいは
薄っぺらな閉塞
体を覆う
紙一枚
意識なきまま
文字もなく
どこへともなく
なに ....
見渡す限りの地平線
垂直に立ち、歩む人
何処までも何処までも
肉を携え魂を生かし
意志の命ずるそのままに
今在る不思議に打ち震え
私の足はすぐに疲れる
私の口は嘘ばかりつく
私の瞳は真実を見ない
私の指はペンを持たない
ノートはいつも白紙のままで
作品が完成しない
壊れた天使を抱いている
という詩を書こうと ....
あまりの寂しさに
体からスライムを出せるようになった僕は
だれも覗かない自室の中で強張ると
無色透明な粘液に包まれる
まだらに入った気泡になんだかやすらぐ
必然性を含有していないからだろ ....
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