風は吹いている
独りの個体がその風に乗せて
内底から溢れる声で歌う
私の生は貴女たちに負っていると
わたしは六畳の白壁の
小部屋に座り
その歌を聴く
世界に一人しかいない
この孤独 ....
さるすべりの紅、蝉の死骸
車列は延々と、行き交う人々
陽光は降り注ぎ、時は流れる
私という個体は
肉の苦痛を不断に携え
知覚と思考に世界を委ねる
一拍置いて目を瞑り
内底深く広が ....
太古から海は在る
太古から太陽は輝く
私は草地に立っていた
気付くと私は存在していた
遥か海を臨み、頭上で太陽は爆発し
訳もなく哀しくて涙が溢れ
太古から海は在る
太古から太陽は ....
漂いながら
青空を舞う
戯れながら
青空に呑まれる
わたしはあなたを知らない
あなたはわたしを知らない
ただ肉の痛みを殺していくだけ
打ち鳴らされる世界の音群に
飛び跳ねる世界 ....
広がっていく
広がっていく
生命力を溢れさせ
愉快に、快活に、歓喜に充ち
内面への途を
直観から結ばれ
心の底の宇宙を
神々が躍り出す局面を切り取って
神々は外にはいない
宇宙は ....
通り過ぎていく
あれも これも
通り過ぎていく
別れすら、喪失すら、死すら
記憶の奥に凍結され
でも どうしても
過ぎていかないものがある
意識の核のようなもの
遠 ....
「われらには存在は与えらてない。われらは流れに過ぎない。
われらは喜んであらゆる形に流れ込む。
昼に、夜に、洞穴に、寺院に。
われらは貫き進む。存在への渇望がわれらを駆る。」(ヘッ ....
夜が明けるのか
日が暮れるのか
判然としないところに
留まっている
気楽に、穏やかに
心の深みに臨む
意識が覚醒する
静謐な孤独に包まれる
眼前の世界が
鮮明な輝きに充ちて
広 ....
私は夢を見ているのだろうか
そういう私も夢なのたろうか
世界は私も含めた表象*1という夢なのだろうか
それらの問いかけは思考によってなされる
わたしの内底から直観的に沸き上がる思考によって ....
やっと静けさが訪れた
外は稲妻、内は冷房
ジョン・レノンの声が響く
夢と現の境にいるような
剥き出しの独りの魂のように
脳髄を震わす
此処が
天国だろうが地獄だろうが
構わない
....
航空便をキャンセルして
レンタカーを借りた
早く帰ることになってごめんね
いいのよ。会えただけで充分。
私の方こそ仕事休めなくてごめんなさいね
12年すごした町が見えなくなるまで ....
青の世界に入る
裏返りながら
肉の痛みに耐えながら
青の世界では
虹が湧き立つ
美と哀しみの揺動
貫く霊性
僕は独り
白い部屋に佇む
舞い散る雪を思って
別離の感覚を取り戻 ....
時計の針は西を向いてる
短い夏の航海
垂直なきみに水平な私
どこにもお出かけしなかったあの夏のラブソング
好きがないから隙
やらかした。4時間以上経つのにまだドキドキ ....
吸い込まれる
遠い汽笛
戯れる子供達の影
娘は出かけたきり帰ってこない
壊れたら
水底深く沈むしかない
たましいの強さを信じて
人生の終わりに
輝くものはあるか
内面深く沈潜して ....
冷え切って
毒づいて
虹のかかる遥かな空を
大きく両腕を広げ渡っていく
君が悪いわけじゃない
僕が間違ったわけじゃない
ただ人々が佇立する
ただ独り独りひざまづく
神妙に、繰り返し繰り ....
幸福とは笑顔のことで
夏休みの子供にあって
土日の大人にないもの
幸福とは未来のことで
無計画にあって
心配にないもの
幸福とは夢中のことで
このセミにあって
わたしにないもの ....
遠く奥まる意識が
貴女に近接する
計り知れない高みから
雨は降り続け
柔らかく思考を包み込む愛
天空で舞い散る花火
音楽は鳴り続け
束の間の永遠に身を任せる
送った手紙 ....
熱波渦巻くこの街に
晴れ渡る青が落ちて来る
目覚めた意識は盛り上がり
生きて在ることの凄さに打ち震える
疼痛発作の間に間に迫る世界
知覚と思考を圧倒し
銀の輪舞を繰り返す
美しい響きの渦に呑まれていく
静かに波打つ大海原
残響は遥か魂を震わせ
遠い親密な記憶に接続する
掘り起こせ、今夜
掘り起こせ、記憶の痕跡を
神々が吐き出したこの世界を
最後に成就し ....
舞い散る雪が
街灯の明るみに
純白に晒され
夜行バス
俺の膝の上で眠る
愛娘
この幸福は
長くは続かないと
予感した
冷え切って
独りで臨む
世界は
その裸形を
剥き出し ....
この盛夏、
蝉の声を初めて聴いたよ
朝だ、朝
一日はもうとっくに始まっている
目的と目標を携え歩く人々
僕は世界が在ることに
ただただ驚き神秘を探る
この盛夏、
蝉の声を初めて ....
夢のなかにいるように
夢のなかで歌うように
輝く、輝いている
星、星たち
意識は奥深く落ちて
わたしは誰?
わたしはどこからやって来た?
無表情な現実がかき混ぜられ
失われた魂 ....
あらゆる灯りが消え
あらゆる夢が絶え
ただ青い天空が広がる
ただ青く突き抜けて
ただ青く静まって
脈打つ心臓は止むことなく
記憶に麻痺した僕はため息
包み込む宇宙は絶えず遠去かり ....
声が踊っている
疼きの渦のなか
束の間の命の果て
死は避けがたく訪れ
わたしの肉を奪っていく
苦痛に充ちたこの肉を
喜びを刻印したこの肉を
思い出がすべて蘇り
やがて消滅する
....
私たちは永遠の吐息、
その美しい比喩
私たちは下降する、
空の底を割り
永遠は生動し、
遥か大地に接続する
二〇二一年三月一日 「生きていた火星人」
ロバート・シルヴァーバーグの『生きていた火星人』を読み終わった。火星人が生きていたことがわかったところで、物語は終わる。主人公の10歳の少年と9歳 ....
ビートルズを初めて聴いた中二の休み時間
直観と感覚が一体化した
直観は向こうの奥底からやって来て
感覚はこちらの世界からやって来て
繋がり共働した
僕はこんなにも自由だ
僕はこんな ....
霞んだ滲んだ奥底から
仄かに姿を現すもの
深い、深い
海の底にいるように
無音のうねり
無音の夜
限りない広がり
限りない響き
忘却と思い出の狭間に立たされて
奥 ....
傘を差しても濡れてしまうほど豪雨だったが、今は止んでいる。風は緩やかに吹いて、となりの籾乾燥施設傍の、クルミの小径木に巻き付いた葛の葉が揺れている。ヒヨドリたちが鳴き始めたから雨は当分降らないのかも ....
ことばをひらくとき
ことばよりさきをいくものがある
たえず
観念を突き破り
欲望の先を駆けていく
あり
つづけ
のがれ
つづけ
おいつけない、おいつけない
黄昏の光を浴 ....
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