ぼく生まれたい
ぼくの中から
ぼく生まれたい


ぼくの中のぼく
まだ名づけられてない
たずねても
だれもいない
なにも知らない
風のような風と
水のような水
まだ名づけられて ....
忘れるほどの歳月の向こうから
一枚の葉書が届いた


まだ文字を知らなかった
三歳の娘がいつか
手紙のまねごとで落書きしたものだ
この秋の古い引き出しから
それは落葉のように
はらり ....
おれんじ色の船にのって

ぼく砂漠へ行くの

降りしきる流星群を見つけたら

きみに長い長い手紙をかく

それからポストを探して

三千年の旅をする
ゆうがた 河川敷でキャッチボールをする
おじさんとの日課だった
しばしば深い草むらにボールを見失う
ボールは地球の卵だからな
すぐに地球のふところに帰りたがるのさ
おじさんの口ぐせだった
 ....
きょう
夕やけを見ていたら 空が
あかい舌をだした


飛行機にのって
船にのって
汽車にのって
ここまで来たんだよ と彼女はいった


空と海と陸地と
そんなにいろんな乗り物 ....
ぼくは 生きています
なんとなく 生きています
いいえ ほんとは
生きたいと思って 生きています


ぼくはときどき 詩を書いています
詩のようなもの と言ったほうがいいかもしれません
 ....
山の裾を ていねいに
両手でならしていた おばあさんの
あれからまた
小さな山が ひとつふえた


新しい山は ひとの形をしている
足のしたで 山は
お腹のように やわらかかった

 ....
赤いチョーク
のようなトンボが
風をひっかきひっかき
ぼくの背たけを測っている


ぼくは大きくなっただろうか


朝ごとに
ぼくは生まれる
よろこびとかなしみの
草の中から
 ....
まいにち 階段の数をかぞえる
それが 母の日課だった
増えたり減ったりするので とても疲れる
と母はぼやく
階段のある家には 住みたくないと言った
階段がなくなったら ぼくの駅がなくなってし ....
夏は
ひねもす虫を追って
森にまよう


虫は
翅をひらき
森を飛びたつ


夜は
空の翅で
ぼくは飛ぶ
指のさきが星にふれる
真珠のしたたり
涙のあかり
アップルグリ ....
空のどこかに 始まりと終わりがあるのか
いつまでも一日が終わらない ぼくたちの
浮遊する魂の 影を見失うころ
すべてのかげが消えて そこから
すべてのかげが あたらしく生まれる


幾夜 ....
北陸のある地方では
おたまじゃくしや小魚が空から降ってきたらしい
不思議なこともあるものだ
ありがたいと言いながら年寄りが
空に向かって手を合わせている
そんな姿をテレビでみた
そのひとの ....
おじいちゃん
ゆうべもあかんことしはったんやてね
ビニール管抜いたら帰ってこれへんようになんのに
看護師さん かんかん
わたし とぼとぼ
  キリン…とおじいちゃん
はいはい、わかりました ....
ほとんど水平に近い角度で
やっとその星をとらえたことがありました
あと三日で見えなくなるという百武彗星
あれはアトランタオリンピックの年でした
宇宙にいくつも弧を描きながら
あなたの天体望遠 ....
そこに
風の道はなかったけれど
風を運ぶものはあった
見えない軌跡を引きながら
きみの空中ブランコが接近してくる
渦まく風のすべり台では
空のクリオネたちが目をまわしていた
宙を満たして ....
からまつの暗い林を
どこまでも歩いたような気がする
きゅうに空が明るくなって
その先に白い家があった
それは夏の終わりだったと思う
空へ伸ばしたきみの腕が
ブラウスの袖から露わになって
 ....
星が降る
そんな時代がありました

文字が光って
うれしいメールが届きました
たぶん遠い星からです

あなたの住む
青くてきれいな星をいつも眺めています
いちどお会いしたいものです
 ....
小鳥が死んだ
小さな穴を掘って
小さな葬いをした

掌にのこる
かなしみの小さな翼を
空に放つ

夢の中で
小鳥は翼を失うだろうか
ひとは翼がないから
夢の中で
空を飛ぶ

 ....
階段の上に子供がいる
それはぼくだ
ぼくは階段をのぼる
すると
子供はもういない

階段の下に子供はいる
それもぼくだ
ぼくは階段をおりる
するとまた
子供はいない

かつて誰 ....
いつ見ても
仰向けにひとが寝そべっている
その山のかたちを
いくども夢でなぞった

あれからずっと
山はおだやかに眠っている
なにも変わらなかった

夏のあいだ飼っていたコオロギを
 ....
きれいな花は
きみのために咲く

胸のボタンをはずして
きみの乳房に愛をささやく
ぼくは天国へゆき
きみも天国へゆく

*

ボタンを押すと
きれいな花が咲く

砂漠の少 ....
小さな指のさきで
木の実をひろいながら
ドングリ
という言葉を
娘は覚えた

昼間のつづき
眠りの窓をしめて
散乱する
ドングリと戯れていた
ことばと戯れていた

ひとつふたつ ....
父のポケットに
ときどき手を入れてみたくなる
そんな子どもだった

なにもないのに
なにかを探してしまう
いくら背伸びしても届かない
指の先がやっと届きそうになって
そこには父はいなか ....
妹が泣いていた
だいじなオルゴールの中に
嫌いな虫が隠れているという

ふたを開けると
ときどき
キロロンと虫が鳴く

きれいな音のでる
オルゴールの不思議なピンを
折ってしまった ....
ながい腕を
まっすぐに伸ばして
陽ざしをさえぎり
さらにずんずん伸ばして
父は雲のはしっこをつまんでみせた


お父さん
いちどきりでした
あなたの背中で
パンの匂いがする軟らかい ....
ひとりひとりの
誰かに似ている石の仏たち
きのうまで近くにいた
でも今日はいない

だれも知らない
過ぎ去った日の遥けさを
石の視界は
どこまで届いていくのだろう

十六人の不動の ....
風の音がした
ふり向くと誰もいない
十八歳のぼくが
この街をつっと出ていく

いつも素通りしていた
その古い家から
いつか誰かの
なつかしい声が聞こえた

敷石を踏む下駄の
細い ....
夕方の六時に
ミュージックサイレンが鳴る
さみしく愛らしく
いぬのおまわりさん

七つの子のカラスではなく
赤とんぼでもない
ゆうやけこやけでもなく
家路でもなかった

だからとき ....
今日もいちにち
風の中を歩いてきた
ひとは揺れている雑草の
つくつくぼうしだった

音は声となり
形は姿となり
匂いは香りとなり
色は光となるように

風景は風光とならなければなら ....
今夜も窓ガラスを
こつこつとノックする
かぶと虫だ

息子よ
きょうの収獲はいっぴき

絵葉書はいくども読んだよ
寝苦しい夜は流氷の夢でもみたいものだ
熊の肉と行者ニンニクをかじる
 ....
yo-yo(215)
タイトル カテゴリ Point 日付
しずく自由詩2*09/11/6 20:54
葉書自由詩1*09/10/30 6:05
流星群自由詩5*09/10/22 22:43
オーロラ自由詩6*09/10/16 6:31
やまぶどう自由詩10*09/10/9 6:11
ぼくは どこへも行けない自由詩6*09/10/2 18:17
彼岸自由詩4*09/9/18 6:03
蜻蛉(とんぼ)自由詩8*09/9/11 20:41
階段自由詩10*09/9/4 19:21
翅(はね)自由詩6+*09/8/22 6:02
星の命名自由詩8*09/8/15 6:03
空の水自由詩9*09/6/16 21:28
関のキリン自由詩4*08/12/29 12:36
星の岬自由詩10*08/12/22 6:11
サーカス自由詩11*08/12/3 6:28
UFO自由詩14*08/11/24 7:11
自由詩6*08/11/10 7:09
自由詩5*08/11/4 20:22
自由詩6*08/10/29 6:16
自由詩3*08/10/25 6:37
自由詩3*08/10/21 6:27
自由詩14*08/10/14 7:57
自由詩24*08/10/6 6:20
自由詩3*08/9/30 6:24
自由詩21*08/9/25 6:06
風の十六羅漢[group]自由詩3*08/9/21 6:03
風のおと[group]自由詩14*08/9/12 6:32
風のうた[group]自由詩8*08/9/7 12:33
風の中をあるく[group]自由詩5*08/9/3 7:54
かぶとむし通信[group]自由詩6*08/8/31 8:03

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