あまりに懇願されるので
試しに小指を与えてみた
男は急いで口に運び
コクリと飲み込むと
生あたたかい求愛がわたしに届く
唾液に光った男の喉をうっとりと通りぬける
わたしの小指

満たさ ....
先週の午後
雨と一緒に
隣の男が降った

最上階に住んでいるとそれだけで
いつでも飛び下りなさい、と
手招きされているような気がするので
荷物が重たくなった時などは
ベランダに近づ ....
 地下鉄の風に胸の内なぶられて



 食物連鎖 取り残され 独り夕食



 どこも痛まずに爪が伸びてゆく



 今月も産まれない卵を産み落として



 部屋 ....
理不尽なことが多すぎる
どこまでを正当防衛としてくれますか、そうなる前に完璧なマニュアルをください
ため息の液化
5番線に電車が入ります白線の後ろまでお下がりください
エラ呼吸に切り替える
 ....
28から7を引いたら残りはいくつになりますか
答えは0です
私は除かれた7だったから


  +


ことがそろそろ長くなってきたので
座ぶとんを引いてパチンと切った
ことは勢 ....
寝つけずに気がつけば
枕元に私の子供が立っていた
一度だけ会えた時あの子は手も足もバラバラの血まみれで
顔なんてもちろんわからなかったけれど
不思議とあの子だ、と感じた
嗚呼、女の子だったの ....
信号を無視してあらゆる交差点を渡った 緩慢な自殺未遂もことごとく失敗に終わり
裁縫バサミで刺した腕の傷も今はもうほとんど目立たない


つながれた大型犬が吠える それにつられて隣の家の
つな ....
世界は
もっと不思議なままでよかったのに
虹の七色
逃げ水
姿見
知ってしまった全てが
恨めしい




君よ
その背中を覆う漆黒は
僕の夜だ
初めに与えたのは君のほう ....
自動ドア
が開いた途端もうなにも聞こえなくなるくらい饒舌の坩堝なのだった
新参者が特等席でハバをきかせている
いたるところで人が出逢い
魅了され きつく絡み合い 約束を交わし 駆け引きをし 嫉 ....
乱視の交差点が光にまみれている
穴に落ちてしまわぬよう
慎重に渡る


いつか
二人で広げた新しい傘の下
けれど赤と青は紫にはならず
個体であることのかなしみを知った


ほ ....
二ヶ月ぶりに会って
しばらく動けなくなるくらいのセックスをしたあと
夕方にゆっくりと起きだして
二人でシャワーをあびた


あなたのマンションのユニットバスは
浴槽がとても小さくて
ど ....
深夜、男友達から『お前のことずっと上海してた』と電話。ひどく
驚き、『ごめんなさい』とだけ応えて電話を切る。自分の言動を振
り返り、しばらく彼には会わないでおこうと決める。図らずも点と
点 ....
決まって
微熱がでるのは
実らなかった果実を葬る準備の
涙の熱さ

下腹部の奥深く
あなたのオスは死んでいて
私のメスの両腕が
それでも離すまいと
必死に掴む時の
痛み

 ....
 石を轢く

 花を轢く

 進んだ跡ができあがる



 生きていることを

 考える
私は独りで自慰をするしかなかった
匂いなら今もそこここに
残っている
けれど
本当はそんなもの
もう
何の意味もない


忘れない
ぬるい風が頬を撫でていた
あの真昼
二 ....
視界に広がるこれまでが
あまりに深いので
私たちはすくみながら頂に立ち
いつの間にか手を繋いでいた


あの層を一枚一枚剥がしてゆけば
私たちがいつか手放した大切なものに
また会え ....
ビートルズの曲は
たいていタイトル部分しか
歌詞がわからなくて
あとはみんなホニャラ〜とごまかして歌う
これ日本の法則

で終わろうとしたテレビ側が
最後にインタビューしたのは
く ....
 
知られたい秘密だってある
けれど口を一の字に結んで
茶封筒と共謀し
あの人の妻 の
手元をすりぬける

キッチンのテーブルでは
ブティックのダイレクトメールが
あの人の妻 に
 ....
 
“ヤラセか、その瞬間を狙っていたのか”と責めたてられ
キャパは口を閉ざしてしまった
頭に被弾した兵士の写真 真相は闇の中
やがて彼の肉体もカメラとともに地雷で散った


病弱の祐三は ....
 
道のひとつも間違えず
毎日を器用に歩きながら
私はここずっと
半分行方不明です


タバコを吸おうと
ベランダの窓を開けると
残りの半分が
風にはためくので


飛ばされ ....
 
  腹減ったから
  なんか 食おうぜ


って
入ったところは
今どき珍しい
換気扇が壁にひとつ付いてるだけの
けむけむの
もくもくで


ねぇ
さんにんで会うときは ....
 
いつものことだけれど
早々に月がやってきたので
まだ授業は始まらないわよ、と
太陽に聞こえないように
こっそり耳うちした
けれど
待つのは嫌いじゃないから、と
頭をぽりぽりかきなが ....
 帰りのJRまでにはまだ三時間ほど余裕があった。真冬の札幌で所用を済ませたあと迷わず向かった先は、昨年11月にオープンしたばかりの丸井今井札幌南館内シアターコムサ。その中にあるカフェ・コムサでケーキを .... 北海道の地方都市では
量販店はひたすら郊外型になってしまって
駐車場は平地で2000台収容
回転式のエントランスに
何カ所にも設置されたエスカレーター
天井は高くて空気もよくて
新宿のビッ ....
  
  
公園のベンチ下で寝ころがって
グレープとの蜜月を思い出す

黒蟻に残り香を葬られ
雨風に何度洗われてもまた

消えないタトゥーを指でなぞって
グレープのことを考えている
 ....
  
    望んでいたのか仕組んでいたのか遊ばれていたのかは知る由もない
よ。だいいち問題はそんなことじゃないんだ。滝川幼稚園すみれ組のタケシ
君は私の初恋の人。ませた私は教室でいつもタケシ君 ....
匂い立つ深緑と
立ちのぼる雲の下で
十日間だけの地上を生き急いだ
蝉が逝く


追いかけっこに夢中になって
境内に滑りこんだ少年達も
盆を過ぎたころ無口になって
夏が逝く


 ....
縁側
手相を診てあげる
と広げさせた手のひらの大きな皺は
私とそっくりで
  ああ、こんなところにも
  血が隠れとった
と同じ眉をして笑った

  今年も本家から柿が届いたから
  ....
地元の人間にさえほとんど知られていない裏路地の
石畳の階段を降りきったところに
さびれた骨董屋があって
そこでは【地下鉄の黒鏡】やら
【合わせ鏡の13番目】やら
【白紙五線譜のオルゴール】や ....
あの日
しかられて家を飛び出した少女の私は
夜に足をとられて川べりに一人
飲み込まれるのが恐くて泣いた

もう誰も私を見つけない気がした
一人分の砂利の音は
風に揺れる荒れ草の音に
さ ....
石畑由紀子(108)
タイトル カテゴリ Point 日付
美しき日々自由詩3204/8/12 21:02
朝のこない団地自由詩1204/8/1 23:19
一行詩抄・鬱々自由詩704/7/25 21:46
魚雷を避けながら自由詩10*04/7/6 22:34
こときり自由詩1404/6/27 1:27
レクイエム自由詩1104/6/18 22:17
あの頃自由詩19*04/6/15 23:05
自由詩1804/6/10 21:29
書店にて自由詩8*04/6/9 21:52
雨細工の町自由詩8*04/5/27 19:08
自由詩2304/5/12 0:42
上海された自由詩57*04/5/3 22:54
ヒメギミ自由詩904/5/1 18:23
自由詩804/4/24 2:05
それからの孤島自由詩704/4/22 22:59
グランドキャニオン自由詩1504/3/29 1:45
ビートルズ未詩・独白1404/3/25 20:27
封書自由詩504/3/6 1:11
LIVE LIFE[group]自由詩604/3/2 1:01
ゆうやけくつした自由詩604/3/2 0:55
焼肉情事[group]自由詩604/2/26 1:54
真昼の月自由詩904/2/20 21:49
Tea For One (ひとりでお茶を)散文(批評 ...504/2/20 21:43
イトーヨーカドー自由詩1204/2/18 1:29
空き缶自由詩304/2/17 0:40
私生児自由詩1004/2/17 0:39
沈める寺自由詩504/2/13 15:28
民謡自由詩704/2/12 2:31
【ハーメルンの笛】自由詩204/2/12 2:26
ほたる自由詩704/2/7 2:20

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