窓の外が雨降りかどうか
知りたくなったら
行き交う人々の差す傘を
探せばいい

雨粒は見えなくたっていい

傘は雨のことば
青、赤、黄色の点滅で
雨の居場所を伝えてる

だけど今 ....
冬の冷えた室内で
窓辺から入るわずかな
陽差しの温もりになぜだか
懐かしい気持ちになる

思い出と呼ぶのには
あまりに淡い

その柔らかな温かみは
時間という毛布を
かぶせた記憶の ....
僕が語りかけているのはあなただ。
そして、あなたはこの詩を読む必要はない。
なぜなら、この詩はどこを探しても
詩ではないからだ。

詩でないものを、あくまで詩として掲げているだけだから
詩 ....
 ちいさな町の家々と
 林の合間をゆっくりと
 阪急電車がゆき交った
 まるでえんじ色の
 リボンを掛けるように

 ちいさな町には幸せも
 不幸せもあるだろう
 けれど始発と終着駅が ....
落下傘が
降りてくるのに
かっこうの空です

落下傘が
降りてくるには
じゅんびばんたん
の空です

今日わたしは
地球の
目じるし
夜明け前に
降り始めた激しい雨が
いつのまにか
霧のような雨に変わり
家々の屋根も
高速道路も 田んぼも
木々も 町がみな
おしろいを
すべらせたように
薄化粧をしていた
 
外 ....
世界にたったひとり
取り残された気分で
自転車を走らせる

コンビニを通り過ぎ
高架下をくぐり
収穫を終えた田んぼの
あぜ道をカタカタ走る

目の前の景色は
時と同じスピードで
 ....
 
あたまのうえは
どこからそらに
なるだろう

あめふりぐもの
さかいめは
どのまちゆけば
みえるだろう

こたえはいつも
かぜのなか

つかめどもつかめども
てのひら ....
 
 
熱く茂っていた青葉のような感情も
秋が来れば紅く色づき
やがて枝を離れ
アスファルトに落ち
わたしの胸にも落ちる

落ち葉は、言の葉となる

胸に立て掛けていた
ほうき ....
 海をブラウン管が渡ってゆきます。

 空を映す管面に鳥が舞い降りて、また飛び立ちます。

 手紙が 一通入っています。
 
 
さようなら

遠くへ行くあなたにたった五文字のことばを借りてくる
日本人の祖先が紡ぎ億万の同胞が借りた
在りふれたことばを

さようなら!

まるで吊るしの背広に初めて袖を通すようだ
 ....
晩から降り始めた雨も
今朝はすっかり上がり
空は青いスカーフ
ところどころ浮ぶ雲が
銀色に輝くペンダント

よそいきの装いのなか
からすが一羽
北へ向かって
真っ直ぐに飛んでゆく
 ....
扇風機がうつむいて
右や左を見回している
探し物はなんですか?
あの日、海岸で拾った
貝殻なら引き出しの中

扇風機がそっぽ向いて
止まってる、そばで
あなたが寝ている

今は探す ....
猫、草きれ、子どもらの
影法師だけが揺れている
主はどこへ行ったのか
影はゆらゆらと変容す
猫はいつのまにか草きれに
草はいつのまにか子どもらに
子どもはいつのまにか大人の胸もとに
アイ ....
夜と朝とはどこで
つながっているだろう

虹と地面はどこで
つながっているだろう

私と私の身体はどこで
つながっているだろう

列車に乗る旅人の瞳に
変わりゆく世界の様が
つぶ ....
いま、私は砂時計

頭に溜めていた沢山の記憶

楽しかったこと
辛かったこと
恥ずかしかったこと
どうでもよいこと

砂粒となって手足へと
みんなみんな流れてゆく
ただただ時間だ ....
目の前に果てもなく
広がる海と
ちっぽけな私の胸とは
どうやら深き底で 
繋がっているらしい

堪えきれぬ涙と
いっしょくたに力任せで投げ入れた
灰色の貝殻が波間に消えてゆく
そのか ....
とおくに住む
あの人はきのう
のいち、になった
十万分だか百万分だか
分からない
のいち、という
数字になった
みんながみんな
ごっちゃになって
失われてゆく
いちどきに
とおく ....
工場の若い工員が
長細いフランスパンを
後ろ手に握りしめ
食堂から持ち場へと
小走りで駆けてゆく

グレーハウンドの尻尾のように
揺れているパンの影を見送れば
午後一時を告げる鐘が鳴る ....
今日という幕の下りた舞台にまだ立っている
無名役者のような気分で、夜の小径を歩く。

行く手を照らす街灯の光を目当てに進んでいても
知らぬ間に自分の影が、すっと僕を追い越し
いつしか僕は、僕 ....
わが身を仰向けて
土のうえ 横たえば
わたしもいつしか
星のかけら

ふたつの井戸は
涙の水をたたえ
不格好な洞穴も
そよ風を盛られた
ほほえましい噐

幾万年の時が過ぎても
 ....
 いつまでたっても上手く開けられなかった菓子包みをあなたは、つるりときれいに解いていたね。そうして僕は、クッキーを手に入れたりした。あなたは模様の付いた包装紙を四角くたたむと、冷蔵庫のとなりに差し込ん .... 宵の頃から明け方まで
天の雪が静かに降りて
町ぜんたいが真っ白な
画布(カンバス)でおおわれる

朝になれば
小さな者たちが
家々から画布の上へと
皆いでて 息を吐き
それぞれの絵を ....
虹がかかると
いうけれど
ほんとうはぜんぶ
水なのです

風がそよぐと
いうけれど
ほんとうはぜんぶ
波なのです

町が見えると
いうけれど
ほんとうはぜんぶ
光なのです
 ....
いつか

大きな災いがやってきて
世界が赤く燃え尽きたとしても

いつか

大きな悲しみが溢れ出て
世界が闇に閉ざされたとしても
どうか その先に

たったひとつの希望の光が
 ....
冬枯れの畑に立って
鯨色のジャンパーを着込んで
二月の夜空を見上げ
父の書斎で拝借した
古ぼけた万年筆を
夜のインキに そっと
ひたし 流れる雲の
切れ端に綴った
あなたへの手紙です
 ....
夕暮れるのに少しだけ
早い時の中を自転車で
漕いで回れば耳に届く
ピアノを練習する
くぐもった音色や
郵便配達のカブが
ダダ・ダダと駆ける音
引き戸をカタカタカタ
と閉める音
家に帰 ....
何十年も会っていない
友達を まだ友達と
呼んで良いか どうか
分からないけれど
年に一度、その友達と
年賀状を交わしている

お互い会おうと言わず
メールはせず
電話もしない仲なの ....
子供達のいない公園は
時折り古代遺跡になる

すべり台は物見の塔
ブランコは祭り道具
砂場は野菜の洗い所

一つ一つが遥か彼方に
置いてきた記憶の欠片
回転遊具の中に入って
見上げ ....
産まれてからこれまで出会ってきた人の数と
同じように 別れてきた人の数が
いつか 等号で結ばれる

その時は誰にとっても等しく訪れる
(始まりの日が等しく訪れてくれたように)

私たちの ....
佐倉 潮(65)
タイトル カテゴリ Point 日付
自由詩515/10/11 0:29
温度自由詩015/3/8 22:30
距離自由詩115/1/13 0:51
阪急電車自由詩314/11/23 13:21
落下傘日和自由詩314/5/8 2:50
薄化粧をして自由詩213/8/24 22:57
月が追いかけてくる自由詩613/5/12 23:32
にじのふもと自由詩412/8/11 23:07
焚火自由詩612/3/6 23:53
手紙自由詩812/2/19 1:10
離別自由詩112/1/22 3:08
手紙自由詩311/12/11 21:09
晩夏自由詩211/10/22 14:29
自由詩411/10/12 7:57
連結器自由詩211/9/28 21:07
砂時計自由詩111/9/3 23:40
貝殻自由詩011/9/1 21:07
数字自由詩311/8/17 1:56
フランスパン自由詩311/7/26 12:54
家路自由詩011/7/14 1:03
星のかけら自由詩111/6/10 0:19
手紙自由詩511/5/20 1:30
カンバス自由詩111/5/8 21:32
愛のふしぎ自由詩511/5/2 11:52
祈り自由詩111/4/24 22:02
夜のラブ・レター自由詩311/4/18 21:53
小さな楽団自由詩811/4/16 23:32
年賀状自由詩211/4/11 21:29
象形文字自由詩411/3/24 0:20
等号自由詩411/3/3 1:51

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