川があった。

大きな川だった。
その川の中腹に、一人で立っていた。

ときどき、強い風が吹く。
そのまま川面に倒れ込んで、
流れに身を任せてみたくなる。

いつしか、辺りは暗くなっ ....
会いたくて

今すぐ君に会いたくて
駆け出しそうになるけれど

僕がどんなに手を伸ばしても
君の足元にも届かない

だから
うんと努力しよう

いつか 君と
肩を並べて 歩ける ....
彫刻の道化が
舞台の上に佇んでいる

暗闇のなかで
誰かが固唾を呑む音がする

彫刻が 手を振り出した先に
三振りの剣が現れた

剣は 次々に道化を離れ
宙高く飛び上がっては
ま ....
いつか詩人になれるなら

世界中を旅して回ろう
草原を駆ける羊たちの群れを
湖に映る青空の影を
収穫を願う人々の踊りを

感じたものを
感じたままに
言葉に紡ぎ出せるように

世 ....
前触れもなく 出逢って

目が合って
語って

惹かれ合って
焦がれて

もう一度 出逢って

もっと引かれて

手を取り合って
求めて

確かめ合って

抱きしめて ....
小学校の卒業アルバムには
「僕の夢」という題で書かれた作文があった
何も知らなかった頃に 間に合わせで書いた
他愛もない夢


日中のオンラインゲーム世界の中は
比較的 閑散としていた
 ....
火炉から伝わる振動で
室内の空気が震えていた
重い隔壁に遮断されているにもかかわらず
バーナーの熱が 鼻を焦がすようだった

 外では
 遮るもののない太陽が
 青空にただ一点 光と熱を ....
ヤマアラシなあなたは
いつも なにかと考え無しに
針という針を 逆立てて
誰かれ構わず 体当たり

あなたが喋ると みんなが黙る
あなたが通ると みんなが避ける
あなたが怒ると 誰もが謝 ....
僕らは ひとりじゃいられないから
引かれ合って
手を取り合って 近づいて
抱きしめ合って 求めて
もっともっと
互いの境界線さえ越えて
ひとつになって
融け合って

ぐちゃぐちゃにな ....
白く輝く無慈悲な太陽が
干上がった大地から 何もかも蒸発させる頃

私と彼女は
並走していた

灼けるような暑さも忘れ
私たちは
ただ 明日を生き抜くためだけに
疾駆していた

 ....
「ありがとう」
って言ってほしくて 親切するのは、
偽善だって 誰かが言ってたけれど

ありがとうって
言ってもらえると
こそばゆくて
うれしくて
いい気分になるから

また、いい ....
心臓の音が聞こえる
満員の観客席が静まりかえり
演技を見守る

終了十秒前を知らせるブザーが鳴り
最後のタンブリングを駆ける

響き渡る着地の音
フィニッシュを決めた両手は
拳を握り ....
苦しくて
悲しくて
みじめで
涙が込み上げるとき

誰にも相談できず
抱え込んで
その重さに 圧し潰されそうなとき

どうか、負けないで
生きることを 諦めないで

誰だって
 ....
気がつけば、
Facebookの友達の数は
とっくに一年の日数を超えてた。

一日一人ずつ会っても、
一年間じゃ足りない。

そう考えると、
一年にたった一日でも
一人の人を独占でき ....
名前を呼んでほしいんだ
君が呼んでくれたら
僕はこの世界に 存在していられるから
たとえ 呼ばれたそのときに
存在していなかったとしても

覚えておいてほしいんだ
一人でも多く 覚えてい ....
体に穴が空いてしまったんだ
胸のここんとこに
大きな穴が空いてしまったんだ

この穴にぴったりと合う部品を探して
取っかえ引っかえ試してみるけど
なぜだかどれも しっくり来ないんだ

 ....
日は落ちても、
積み荷は減らず、

思考は
水底の虫のように
降り積もる澱のなかに
埋もれてゆく

明日はまた違う明日だとしても
私はいつまでも
変わることができずにいる

そ ....
何かと引き換えにしてでも
救いたいから
守りたいから
大切なものを 差し出す人がいる

一方で、
そんな大切なものを
奪い取り
騙し取り
踏みにじる 者もいる

弱き者から奪い、 ....
広い広い宇宙のなかで
たくさんの小さな奇跡的な偶然が重なり合って
僕らは生を得ることができた

そうしてほんの小さな天体の衝突なんかで
いつでも滅び得る、
――そんな危うさの淵にいる

 ....
大丈夫だよ
もう、怖がらないで。

今夜は月もきれいだし
海も静かだから

まだ ときどき地面は揺れるけど
ほんのちょっと 地球が呼吸しているだけだから
この前みたいに いきなり機嫌を ....
四次元世界に開いた 暗い穴の底で
壊れかけた 電球が
弱々しく シグナルを放っている

 都会の駅ビルのフロアでは 乱雑に人々がすれ違っていく
 雑踏のなか立ち尽くす私に 気づく者はない
 ....
半年が経った。

半年後のちょうどその日は
目が回るほど忙しくて
半年が経ったことに気づいたのは
その翌日のことだった

友人の誕生日を忘れたときのような
ばつの悪さを感じながら
つ ....
しかめ面の空の下
排気ガスが充満する都市の片隅を
少年時代の自分が駆けて行く
らく書きだらけのノートを
大事そうに抱えて

裏通りの路地を縫って
山道を抜ければ
大人たちの知らない
 ....
切り立った断崖の道を
あなたは独り 駆けていく
何物にも動ぜぬ 意思を以て

もしも その先に待つ
あなたの夢が
輝き放ち続けるなら

私もあなたの背中を押そう
あなたの手を取っ ....
求めなければ、
こんなにも苦しむことはなかったのに

そっと手を握る。
冷たく、無機質な手。
もう動くことのない手。
その手で、自らの頬に触れる。

夜は終わっていた。
私は立ち上が ....
 ――月が 落ちていた

 頭上の太陽は 甲高く鳴いている

 西の山で、勤めを終えた私は
 ふと 名もない町を訪れた

 眼下の生き物たちは
 汗を搾り取られ 滴り落ちている

 ....
前略

お久しぶりです。元気にしていますか?
私は元気です。暑い日が続きますね。

あの頃は毎日のように顔を合わせていましたが、最近はめっきり疎遠になってしまいましたね。
人って、トコロテ ....
コン、コンと2度ノックをして、僕は部屋に入った。
すっと息を吸って、「はじめまして」とあいさつしたけれど、
どうやら誰も取り合ってくれない。
そこには、一風変わった人たちがいた。

タバコを ....
「お会計の方が、560円になります。」

私は慣れた手つきでクラフト紙を折り
ていねいに本を包み込む
20代のOL風の女性は
ありがとうといって去っていった

電車に乗る私は
君が ....
ふつと
その儚い生涯を終えると

私は
激しく流れる水面に舞い落ちた

釣り糸を垂れる 老夫たちや
喧しくさえずる ハチドリたちを横目に

私は流れ落ちてゆく

ピラニアの鋸歯を ....
結城 希(38)
タイトル カテゴリ Point 日付
見送る人自由詩313/9/13 0:55
星に願いを自由詩2*12/11/13 3:32
サーカス自由詩2*12/10/31 1:43
いつか詩人になれるなら自由詩3*12/10/21 16:21
って自由詩4*12/10/1 1:16
ゴミ箱の夢自由詩4*12/9/16 18:34
火の鳥自由詩312/8/31 2:01
かたちのない針自由詩012/8/26 15:35
ビッグバン自由詩312/8/23 1:07
狩り自由詩112/8/19 12:38
ありがとう自由詩0*12/8/14 0:50
輪(わ)自由詩4*12/8/11 8:43
「ただいま」「おかえり」「また明日」自由詩4*12/8/9 2:26
365日自由詩212/8/7 2:35
サブアカウント自由詩212/8/4 22:23
自由詩511/9/24 0:53
水底の虫自由詩511/9/15 8:32
人なんだね自由詩311/4/4 2:07
コスモス自由詩111/4/4 2:05
アカツキの詩自由詩111/4/4 1:11
仮想マシン自由詩011/3/26 22:18
半年自由詩210/10/23 13:43
スクラップブック自由詩4*10/9/13 0:44
エール自由詩2*10/9/4 17:40
イカロス自由詩110/7/31 11:39
蝉と月自由詩3*10/7/28 2:43
別れ自由詩3*10/7/26 1:17
よこしまなにじ自由詩0*10/7/23 3:17
ブックカバー自由詩2*10/7/21 9:00
ね—マングローブのほとりで—自由詩110/7/17 22:15

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