かごからあふれ出たものを、ひとつ、ひとつ取り出した。
白と、黒に、わけながら、それらをバッグにしまいこむ。
どちらにも行けないもの。
たとえば、グレーのTシャツ。
黒ほど着ௐ ....
東京で傘を買った
気温が高くて雪にはならなかったから
雨なんて何ヵ月ぶりだろうと思いながら
コンビニで傘を買った
とことん後悔してへこんだ日だった
少し早めの時間の空港で電話をかけた
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彼女の朝食は
チーズトーストと、シリアルと、サラダ
スライスチーズを乗せたパンをトースターに入れると
シリアルとサラダの準備をする
ある朝
シリアルが10g足りないと
彼女が泣いた
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ある日曜日の午後、私は同期のあさぎちゃんとカフェでお茶を飲んでいた。
「今日は付き合ってくれてありがとうね」
大木を縦半分に切っただけのようなテーブルをはさんであさぎちゃんがそう言った。
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コンビニの浮世離れの蛍光灯 心ざわめく夏の夜の夢
「イレブン」と略して「田舎」と笑われる この町は皆「セブン」と呼ぶのか
コンビニを左に曲がれど未だ着かず そうか向こうのコンビニだったか
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仕事帰り、会社近くの喫茶店で待ち合わせをして彩夏の部屋に行った。
今俺が穿いているジャージは、持ち帰るのが面倒でずっと彩夏の部屋に置いておいたものだ。放置していたつもりだったのだがちゃんと洗濯さ ....
昔ママが僕に言った
「ママの背中には目があって
お前が悪さをした時には
すぐに わかるようになってるんだよ」
だけど僕の背中には
あいにく目なんかなくて
君が悪さをした事には
気 ....
朝日がまぶしい窓際でタクミを撫でるのが毎朝の日課だった。
「久美ちゃん、もう、八時」
後ろから男の声が聞こえて、タクミは私の手をすり抜けてベッドの中にもぐりこんだ。茶色い背中を見送った後で、思 ....
海から這い上がって、ひたすら泣いた
あたたかなぬくもりの中で、微笑みながら泣いた
君が泣いて、私も泣いた
微笑んだのはどちらが先だっけ
みんなは私だというけれど
本当は、君が先
そうや ....
トンカツ屋
「B級グルメ」と君は言う
そのカツ、君が揚げているのに
アルバイト
ホールの女子の権力が強くて、男性社員は悩む
「陰口を叩かれるのも仕事だ」と
男性社員の目が微 ....
オブラート越しの太陽は、微笑むこともなく、泣くこともなく
初夏の陽気だと告げられた皐月上旬
見た目よりもぬるい朝は、パーカーを置きに帰る気力をも奪っていく
パーカーにモッズコートを重ねたゆる ....
君の上/君が歩けば/追いかける/一番星に/僕はなりたい
都会では/星が見えない/その代わり/空に近づく/ビルの屋上
みずがめ座/想像だけで/結んだら/凶器の鈍器と/死体になった
はず ....
向かい合わせで最後の言葉
吐息と共に涙もきっと
君の横をすり抜けてゆく
こんな日も今日だけ
同時に背中を合わせた二人に静かに風が吹いた
たとえ二人が振り向かなくても
今日も変わらず ....
あなたがベランダで飛ばすホタルがどうしようもなく愛おしい
わがままを言うのならばもう一度、あのホタルに逢いたいと思った
夏だけではなく、年中目の前で飛ぶホタルがいた
真っ赤な奴がいた
....
一生懸命なマスカラ下地を振り払うように
君のまつげはとても長い
男の子にとって
長いまつげは
何のステイタスにもならないよ、と
昔、笑った人がいた
そりゃそうだ
思いなが ....
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