ワンルームのドアをノックする音が聞こえた。
 濡れた髪をタオルで拭いていた昌は、動作を止めて、反射的に壁の時計を見た。夜の十一時だった。
 ドアスコープの向こう側に、白いフェイクファーを纏った見 ....
「疲れる薬だと言うと変に思うかもしれませんが、これは正真正銘の医薬品です」
 あのとき、高木はそう言った。
「疲労薬」と印刷された赤唐紙が、半透明の茶色い瓶に貼り付けられている。私は彼の説明を聞き ....
写真集の中の写真をうつした写真家は

もう死んでおり

この世界にはおらず

いまも死につづけていて

モノクロームに象られた

すべすべとした紙のなかに籠って

かたくなに孤 ....
 ニューヨーク近代美術館の地下ギャラリーに、「ウォーホルの雪だるま」はあった。
 その雪だるまが彼の手によって作成されたのは、1965年のことだ。
 
 僕がそれを見たのは大学を卒業した年の春の ....
 新宿の家電量販店に、除湿器を買いに行った。
 除湿器というのはなかなか使える家電で、雨が多い日などにヒーターと併用すると、室内に干した洗濯物の乾きがとても早くなる。
 何種類かの除湿器を物色して ....
{画像=100421224443.jpg}
 高尾へと向かう中央線の車窓から、シャッターを切った。
 翌日、自室で現像したネガを、ライトボックスでチェックした。
 テニスコートを撮影したコマが面 ....
{画像=100418011811.jpg}
「ちょっと済みません!」
 不意に、後ろから声を掛けられた。
 振り返ると、ベビーカーと一緒に三十歳前後の女性が立っていた。隣にも、ほぼ同年代の女性が ....
 ピラニアは、蛍光灯の光の色をメタリック・グレイに映えさせながら、水槽の中をゆっくりと泳いでいる。
 僕はひんやりとしたガラスに手をかざしながら、ピラニアに向かって話しかける。
「お前とも、もうお ....
 その日は仕事納めだったので、午後4時を過ぎると、事務所の中で掃除をし出す者が現れはじめた。掃除をする者は時間の経過とともに増えていき、それと同時に躁ぎ気味の喧騒も広がっていった。もっとも、全員揃って .... 「怨念だけが残るのです。身体がなくなって、感情がなくなって、さいごに、怨念だけが残るのです」
 博士が女生徒に話しかけた。博士は疲れたような顔をしている。丁寧に撫で付けられた白髪と、プレスの行き届い ....
「それを喰べるかどうかは、もちろん患者の自由ですよ」
 カルテを一瞥して医者は俺に言い、ニヤリと笑った。
 俺もつられてニヤリと笑ったものの、気分的には最悪だった。
 
 俺の肺の中には、キノ ....
「Y」(11)
タイトル カテゴリ Point 日付
美香散文(批評 ...4*12/2/19 0:20
疲労薬散文(批評 ...4*11/10/31 21:01
モノクローム自由詩10*11/10/15 8:55
ウォーホルの雪だるま散文(批評 ...2*11/5/23 21:29
陰湿機散文(批評 ...3*10/10/10 13:29
散文(批評 ...1*10/4/21 22:50
写真のこと散文(批評 ...310/4/18 1:41
ピラニア散文(批評 ...406/11/9 20:44
浴 室散文(批評 ...306/11/8 19:16
怨念マリモ散文(批評 ...306/11/8 18:54
肺 茸散文(批評 ...306/11/7 18:10

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