私とあなたのこれからを
たとえるなら広い広い海であり
小さな舟であっても
きっと二人なら渡ってゆける

嵐に巻き込まれ
高波にあおられて
突然の海流に流されても
きっと私たちは離れずに ....
いつの間にか
ひどい太陽が照りつける砂丘を
歩いている
その光は熱くはないけれど
肌を痛めつける
きっとこのまま
倒れてしまうのだろうけど
この痛さでは
安らかな死を迎えることはなさそ ....
古い摩天楼の傾斜した屋根から
飛び降りようとした時
屋根の上に
傷ついて飛べなくなった
白い鳥を見つけた
微風のように柔らかい羽毛が
ところどころ血に染まっている

しだいに弱ってゆく ....
ある時私は翼が傷つき
二度と飛べなくなってしまったが
水面に落ちたので死ぬことはなかった
でもその日から
私はカワセミの標的となってしまった

私を殺しに降下してくる
七色の体を持つ美し ....
君が放った白い空に
黒い機影が映ります

それは爆撃しにきたのか
それとも救援物資を運んできたのか
分からないけれど

ただ機影だけが
近づいてくるのです

かつて私の中に
雲一 ....
誰にも知られてはならない
耳をそばだてて

この地面の奥深くには
川のように赤い血が流れていて
少女だけがその流れる音を
聞くことができるのです

でも聞き続けていてはいけません
自 ....
流れ出た量と同じだけの血が
体の中で作られる
それが生きているということだと
悟った日から
私はいつでも全身から血を流し続ける
生きものとなりました

私の体で血を流さないところは
背 ....
浅皿を覆うよどんだ水面は
つい今しがたまで命があったのです
それは固形物に味を与えていました
役割を終えて今にも
捨てられようとしているのです

いつ命が失われたのでしょう
それは最後の ....
しくしく
しくしく
彗星が泣きます

太陽からの風に吹かれ
白い髪をなびかせた姿に
人々は怯えました

小さな砂粒に過ぎないのに
何千倍もの姿に拡大され
魔女のように天を駆ける
 ....
もう終わりなのだと
言われても
私という人間は
顔では笑っています
それはとりあえず
同意の笑いです
あなたとの関係を
壊さないための笑い

すぐに終わるわけでは
ないのですから
 ....
その家に入ると
今しがた誰かがいたかのように
明かりが灯されていて
食事までも用意されているのです
でもそこに
人は誰もいないのです

これは深い森で迷った果てに
たどり着くという
 ....
川のように
網のように
体液が流れる

私はあなたという太陽の
光を浴びて
生きる力を得る
一枚の葉のようなもの

でも体液の流れは
あくまで内に秘めなければ
なりません
裸に ....
夜の空にかかる大きな河を
私はまだ肉眼で見たことが
ないのです

日常生活の光は
私に空を見ることなど
許してはくれない

私が疲れて眠っている間に
胸の奥から生まれてきた
誰にも ....
私がひとり
あなたを待つ場所には
街灯がひとつ

災いが襲った街は
まだ暗闇の中なのに
この光は私ひとりだけを
照らしています

見上げれば
それは思いの外まぶしく
波打つガラス ....
(君の化身に)

真珠色に輝いた
すらりと長い一本の角には
少女のまどろみを約束する香りが
まとわりついていました

背の高い草の
柔らかい茎の笛を鳴らし
少女は聖なる獣と遊びます
 ....
雪原の向こうから
聞こえてくるのが
あなたの声と分かります

あなたと私を隔てる
真っ白な雪原では
私の鼓動で雪のひとひらが
舞い上がります

雪の結晶は
科学的な偶然から生まれた ....
人は誰も
起算の町を持ちます

流されるまま生きて
それを誇りにしていた時代も
体の衰えと共に
終わりを告げるのでした

とらえどころのない世の中だから
漠然としていながらも
せめ ....
命を失ったものが
石へと変わる年月は
とても長いのですが
でもいつまでも命を偲ぶ
姿ではいられないのです

時というものは
風に流される木の葉さえ
化石に変えてしまいます
波に打たれ ....
深い森の中に鉄路が走り
群青色の電車が
静かに進んでゆきます
鳥のさえずりを
消さないように

私は食堂車にいて
甘い紅茶をすすりながら
ゆっくりと流れてゆく
外の景色を見て
鳥た ....
終わりのない回転が
少しずつでも確実に
粉を挽いてゆく
尊いもののように

終わりが見えない労働
にもかかわらず
時に光を柔らかく砕き
時に部材をきしませ歌う
愚かなもののように
 ....
拒絶したいものが
多すぎたのです
もはや茎は弱り
棘は何をも
突き刺すことが
できないのです

それでも薔薇は咲いています
誰もその手に触れられないという
誇りの欠片を最後まで持って ....
歴史を変える力などない
わたしたちは
ただ愛し合うしかないのです

隣で眠るあなたが
普通ではないうなされ方をしたので
わたしは思わず手を取り
脈をみました

診療の時間は終わりです ....
むかしむかし
あなたと私の
鳥の骨のような関係が
ありました

肉はもうとっくに
誰かに与えてしまって
白い骨格だけが
残っているのです

飛翔の予感を秘めて
飛翔の過去を秘めて ....
幼い頃より私は
自分が昆虫の一族であると
思ってきました

色香だとか
瑞々しさだとか
まばゆさだとか
そんなものには縁がなく
私のからだは
金属のように硬く
乾燥しているのです
 ....
果てしなく続く乾いた砂地が
太陽の熱で温められ
そこに幻の水が出現するように

終わりなく続く乾いた心が
生きたいという気持で温められ
そこに幻の言葉が出現する

私の詩とは
そんな ....
そこはいつも夕暮れで
暗く沈んだ花園
ある時
一匹の鮮やかな蝶が生まれて
その上を軽やかに舞い始めたのです

私は長いこと
絡み合う植物でした
痩せた葉は光合成を忘れ
さりとて枯れる ....
あなたの唇と
わたしの唇は
近づけば引かれ合い
重なり合います

だからわたしたちの引力は
この地球よりも強いのです

月の引力で
潮の満ち引きが起こるように
あなたに近づくと
 ....
もはやこの世界は荒廃していて
私だけが正しいのだと
私が世界を正しく導くのだと
そんな狂い方をして
私は少年兵団を結成します

何百人もの美しい少年たちを
戦場に向かって行進させます
 ....
あんな色の
月の光に照らされては
わたしたち
色彩を失っていくばかりの
ようですね

あんな色の
夜空に月を浮かべられては
わたしたち
月以外にお友達が
いないみたいですね

 ....
私が今どこにいるのか
あなたには
分からないかもしれません

でもいつか私は
一つの灯台となり
私の存在を
あなたに知らせることでしょう
広大な海をも超える
確かな力を手に入れて
 ....
三条麗菜(53)
タイトル カテゴリ Point 日付
蜃気楼の魚自由詩6*11/11/27 0:13
砂丘の花自由詩5*11/10/26 23:20
ガーゴイル自由詩15*11/10/9 23:30
カワセミの標的自由詩6+*11/9/29 23:38
機影自由詩5*11/9/17 23:50
横たわる少女自由詩7*11/9/6 23:18
血を流す生きもの自由詩1*11/8/29 23:23
残りもの自由詩3*11/8/19 23:59
彗星自由詩3*11/8/6 22:49
水面下での戦い自由詩3+*11/7/28 0:07
マヨヒガ自由詩3*11/7/14 23:45
葉脈自由詩3*11/7/2 23:57
ミルキーウェイ自由詩6*11/6/26 1:54
街灯がひとつ自由詩2*11/4/4 1:58
ユニコーン自由詩2*11/3/10 22:40
雪原自由詩1*11/3/6 1:50
起算の町自由詩4*11/2/27 1:11
恋の化石自由詩2*11/2/22 23:45
薬が効かない自由詩4*11/2/15 23:54
水車自由詩5*11/2/9 23:57
病んだ薔薇自由詩7+*11/2/3 1:12
ドクターストップ自由詩1*11/1/26 23:57
鳥の骨自由詩7*11/1/17 23:39
昆虫と私自由詩3+*11/1/13 23:52
蜃気楼自由詩12*07/4/18 22:59
花園自由詩10+*07/4/3 22:18
引力自由詩15*07/3/17 23:45
少年兵たち自由詩15*07/3/12 22:27
海辺の夜自由詩12*07/3/2 23:13
大灯台自由詩11*07/2/23 1:08

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