水車
三条麗菜

終わりのない回転が
少しずつでも確実に
粉を挽いてゆく
尊いもののように

終わりが見えない労働
にもかかわらず
時に光を柔らかく砕き
時に部材をきしませ歌う
愚かなもののように

空気の澄んだ場所で
きれいな水でなければ
決して回ることはない
そんな幻想を与える
美しいもののように

一人ではいられない
あなたがいなければ
私の体に軸を通して
なめらかに回転させる
それができるのは
あなただけ
あなた一人だけ
だからいつまでも
一緒にいてほしいと
身近なだけの存在に
ひたすら愛を求める
選べないもののように

 ある日川の水が
 蜜のように濃く
 金色に色づいて流れ
 私の回転が奪われ
 あなたもその液体に
 からめられてしまい
 あなたは朽ちて
 私も軸を失い
 地面に倒れる
 甘い終焉を
 夢見る

日々自分について
何かをごまかしながら
生きているのだから
水車は私の中で
回る
回る


自由詩 水車 Copyright 三条麗菜 2011-02-09 23:57:46
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