「…が足りません」
そう言って無愛想な係員さんは私と彼を押しのけた
何が足りない?よく、聞こえなかった
となりのジェットコースターみたいに、
身長が決まった高さまでないと乗れないの?
そ ....
しなやかに 手折る指先 見とれつつ 翼をもがれ 君に堕ちゆく
漆黒の 壁紙に映ゆ 君の色 時を忘れて なぞる指先
浴室の 戸を開きかけ 頬滑る こぼれ髪の香 君の胸にも
絡ま ....
見上げれば
先を越された
通院日
山の向こうで漲る夏が破裂した
立ち込める白煙が遮ってしまうのか
爆音は僕の所まで届かない
気象庁の弱々しい宣言でそれが訪れたことを知っても
半信半疑なのは音が聞こえないからか
きっと弾ける前 ....
君のその両腕の
美しいのが欲しくって
僕は君を手に入れた
何か勘違いして君は
なめらかに光るくちばしで
調子はずれの歌唄う
とてもとても幸せそうに
うんざりだった不得手な唄に
慣れ ....
今日のお月様は偽物なのよ
だってあたし見ちゃったの
あれは二週間ほど前の事よ
まんまる綺麗なお月様が
次の日からちょっとずつ
真っ黒な鎌にちょっとずつ
ちょっとずつ削ぎ取られていったの
....
人差し指のフラフープ
鍵と小さなキーホルダー
くるくる踊るマスコット
鈴つき猫のプリマドンナ
陽射しにきらきら反射しながら
彼の指に操られて
自由に回っているようで
その手に閉じ込められ ....
抱かれるのならホテルがいい。
貴方の部屋は厭。
ああ、このベットでこの人は、今まで私じゃない人を抱いてきたんだな。
と、不意に襲う切なさが貴方の元から私を奪うから。
軋む音は飲み込んだ泣き声の ....
頭上一面厚い雲に覆われて、
まるで大きな卵の中にいるようで、
顔を上げる気力もなく黙々と歩いていたら、
西の空が割れて光が差し込むのが見えた
はるか西のあの場所では孵化が始まって、
何か ....
桜並木の通学路
秋風そよぐ渡り廊下
あたしはきみからかくれんぼ
リボンの端をひらひらと
切なく揺らし 息 止める
遅れて曲がる影にさえ
見つけて とすら 言えないで
ひとり遊 ....
カーブミラーの中に
今日のエンディングが流れた
橙色のスクリーンにのぼってゆく
僕が発した言葉達
明日へ行けない言葉は
電線にひっかかって
澄み切った空を台無しにする
悔いることもできず ....
日が暮れる 金魚の尾ヒレ 追いかけて
にぼしの縁取り花壇には
かつおぶしの花が咲いていて
毛糸玉の飛び石の先に
またたび組み木の灯篭が
猫じゃらしがゆらゆら揺れて
お池の中には真っ赤な金魚
猫が時折見つめる虚空には
そん ....
夏は逝くのだと思う
春や秋冬は毎回 同じものが回っているのに
夏だけは毎年燃え尽きてしまうのだと思う
少年の肌や少女の心に深く爪痕を残して
印象づけておきながら
潮のよう ....
辺り静かな湖の桟橋に
腰掛け夜明けを待つ少女
膝下はひんやりと水に包まれて
いえ、包まれてと言うよりは
爪先からするりと湖面を砕き突き進む
清々しい南極船のような光景でした
掻き回さ ....
赤いカケラが私の喉に
意地悪くつっかえて
声の出口を奪うのです
飲み落とそうと溢れる唾液は
それも叶わず流れ落ちる
カケラから甘酸っぱさを吸い取りながら
透き通った{ルビ黄金=きん ....
口唇からたちのぼる
あなたは薄い雲を吐く
二人の間を遮って
天井にたまってゆく
この部屋を一枚の絵にしたら
あなたの「ふきだし」でいっぱいで
あたしはそこに言葉を詰め込む
何も言 ....
シャボン玉の中に失われた人魚の声が
詰まっているような気がして
割れる瞬間耳を塞いだ
自らの意志で泡と消えた彼女が
恨み言なんて残すはずがないのに
詰まっているのはきっと
虹色の鞠を膨らま ....
夕陽の、
あの世界の全てを焦がしかねない熱量を持つ
直情的な眼差しを
一身に受け止めるたおやかな雲
火傷を恐がらずただ信じて手を広げ
柔らかな身体で抱き止めるその姿が
僕を魅了してならない ....
肌を突き刺す風に
たまらず上がる水蒸気
明日には霧になるでしょう
そんな湖面に私は
足を踏み入れ波を立てる
私を照らすその月は銀色に光って
見て、あなたに映えるように
白い薄いワンピ ....
くるくるふわり
光が舞い踊る胸元
こげ茶色の滑り台は
ほのかに甘い花の香り
顔を上げる度軽く跳ねる
螺旋の中心に隠す恥じらい
夜が近づくにつれやがて緩み
あなたの手で掻き分けられ遂に
....
私は花にはなれなくて
私は花を見るだけで
羨ましげに茎の影から
陽にあたるその透けた花弁を
雨粒が伝うその雌しべを
蝶に奪われゆくその蜜を
私の憧憬への軽い蔑視を
ああ 蝶よ
....
奴らは風に揺れているんじゃない
あのギザギザの牙を剥き
風を食らっているんだ
やがて奴らの揺れが止まるのは
周りの風を食い尽くしたからだ
風だけでは満足できずに
不用意に摘み取る指を
虎視眈眈と欲して
熱っぽい頬を撫でてゆく
透き通った風を足元の
猫と一緒に浴びる朝
その風に行かないでとせがむ
不器用な子供みたいに
遠雷がどこかで鳴り響く
頑なな季節が少しほころびを見せた
き ....
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