△を想像するとき
私はいつも驚いてしまう

声を
憶えている
今でも鮮明に聴こえてくる

言葉や吐息のひとつひとつが
身体に馴染んでいる
足がすくむほど
愛しいと思うときがある
 ....
夜が全ての輝きを
取り払ってしまったあと
残されていたのは
いくらかの金と、脂肪と
ありあまる欲望だけだった

この街の空はいつも背が高い
雲ひとつない嫌味なほど健やかな青

僕は、 ....
そばにいることは
叶わなくなったのですから。
煙草とレモンスカッシュを
傍らに置いて作業をするわけです。
形にこだわるのは
どうか、とも思いました。
大切なのは気持ちで
モノを用意するだ ....
僕らはカフェで向かい合わせに座り、ホットコーヒーとルイボスティを飲みながらそれぞれ本を読んでいる。彼女は女性翻訳家が書いたエッセイ集を、僕は高校生のころに読んだ小川洋子さんの小説を読み返している。
 ....
打ち損じた弾丸はまだ喉元にある。僕は咳払いをひとつしたあと、右足をほんの少しだけ前へ出して、声を出すために息を肺に吸い込んだ。「なぜ?」僕は言った。想定していたより小さな声だったがもう後戻りはできない .... 「たとえば」
と、あなたは話しはじめる
私は耳を傾ける

「僕は大トロが食べられない
 脂身の繊維の切れ目が、傷口みたいに見えるから
 僕は小学生のころ、肌が弱くて肩の皮膚がよく裂けて ....
夜がそっと嘘をつくときに
わたしは夢をみる

左手に持っていた不思議な形の
雪みたいに白い、生温かいまるは
なんだったのだろう
光にあてると
白くて細い血管のようなものが
たくさん見え ....
同じような書き出しはもう飽きた
亀の甲羅を水槽で見つけたとき
ぬっと頭が出てくるのだろうと 想像がつくように
君がペンを握ると すぐに結末が見える
一小節目のコードが鳴った途端に
八小節目の ....
 ある晴れた日のこと あかりは右手に
文庫本を持ったまま 空を見つめていた さっきから
カラスほどの大きさの白い鳥が ゆらゆらと 飛んでいるのだ
ゆらゆら ゆらゆ ら
 見たことのない鳥だった ....
"きみのせなかについているそのまっしろなはねで
おおぞらをとびまわってせかいをしあわせにしてよ"

朝、台風の風で道路に転がったごみ箱を
邪魔にならない場所へ移動させる君の ....
考えていると
ますます深みに嵌っていく

どんな抵抗もできない
目の前に広がる赤や白の地球を
呆然と眺めているしかない

冬の夜空には月が見えるかもしれない
なにも見えないかもしれない ....
すべてを
諦めたあと

音はいつでも
途切れとぎれに聞こえた
拍の途中で音が消える度に
僕の顔はびくびくと引き攣った

夜の9時を過ぎたとき
僕はまぶしいオフィスから這い出て
非常 ....
夜が朝日に殺されていく

彼女は悲しさを手放したりしない
夜が終わって朝がくることを
毎朝しっかりと悲しむのだ

彼女は毛布にくるまって
テレビの天気予報を見ている
(きょうはおひるま ....
ひとを
見ませんでしたか?
そうです
さっきまでいっしょにいたんです
さっきまでここに はい
抱き合っていたのです
指にも足にも まだ感触が残ってる
痺れるような 浮いているよ ....
君の首のまわりに
たっぷりと巻かれたストールを見ると
私は冬の訪れを感じる
いつ見ても思うのだけど
君はストールを巻くのが下手だ
タグが見えてしまっているし
形もなんだかイビツだ

 ....
大きな光を抱えていた
真っ白に強く光ったかと思うと
赤や青や紫にもなって光った
強烈なコントラストだ
幻のような夢のような光だ
間違いなく ここにずっといたら
涙が出てしまう
明日のこと ....
5月も下旬だというのにとても寒い日だった
時刻は19時をまわったところで
吉祥寺はまもなく夜になろうとしていた
駅前にはたくさんの人がいる
僕は麻で出来た紫色のストールをぐるぐるに巻いて
冷 ....
季節は冬
空はいちめん曇っていて
あたりは薄いベールをかぶったように
淡くてうすぐらいコントラストだ

右に目を向けると
彼女の左脚とそれを抱える左手が見える
体育座りをしている
ぶ厚 ....
ときどき思うことがあるよ
君は全てを知っているんじゃないかって
僕らに今まで起きたこと
と これからの僕ら
が 君には見えてるんじゃないかって
そんなはずないって
頭では分かってるんだけど ....


時刻は朝の六時を
まわったところだった

ふたりはビルに囲われた
小さな噴水のある小さな公園で
撮影ポイントを探して歩いている

「青がよく映えるから
朝がいちばんいい時間帯 ....
緑ちゃんは
アイスコーヒーを飲んでいる
ガムシロップを3つも入れる

緑ちゃんは
今日もひとりで喋っている
なにかいいことがあったのか
今日はいつもより少しだけ饒舌だ

隣に座ってい ....
テーブルに置かれた
あなたの両手を見ていた
細ながく 筋張った指
私からいちばん見えやすいように
そこに置かれている
わざとじゃないのかもしれないけれど
少なくとも そう感じる
いつもそ ....
湖のほとりに立つ

秋にしては風が冷たい
氷の手が首に絡みつく

湖の水は風を受けて
ゆらゆらと揺れている

ここは寒い季節にだけ
訪れる特別な場所

森も風を受けて
ゆらゆら ....
階段をあがると
すぐ左側に父親の部屋がありました
ドアをあけると
たばことヘアトニックと
何かが混ざった匂いがしました

どうしてこんな匂いに
なるんだろうと思いました

大人の男の ....
森を歩いている
もちろん君といっしょだ
姿は見えなくても
しっかりと手は繋いでいる
この森に来るのは何回目だろうか
岩の転がる広場への道のりも
もうなんとなく覚えている
緑の濃い匂いのす ....
ノートのすみに書きなぐる言葉たち
隙間なく真っ黒になるまで書いてから
ちぎって筆箱に入れていった
ひとに見られないように
ぐちゃぐちゃに丸めて

すぐに筆箱は
切れ端でいっぱいになった
 ....
ゴロツキおじさんは混乱した

自分がどこに居るのかわからないから
ここからどこへも動けない
あの日々こそ 本当だった頃の最期で
今はおまけみたいなものなのだ うん

くっきりと秋の匂いが ....
ゴロツキさんは言いました。
「なあ、タケル。
この部屋にあるものは全部
おじさんが作ったんだぞ」
全部?
タケルは不思議に思いました。
全部って言ったって、
ここには何もないじゃないか
 ....
音と色が消えた
雨を溜めているタンクは
そろそろまんたんになる

傷に敏感だ
腕を固定していたギブスを
予定日より早く取ったひとの話を
聞いただけで吐き気がした
普段はそれほど痛くない ....
はりきって出かけた わたしは
きゅっと胸をはって歩いた
つぎつぎと 景色を変える町
太陽はいま 一番高い場所に

バターナイフを持つ母の指
コーヒーカップを持つ父の指

立ち止まって自 ....
栗山透(31)
タイトル カテゴリ Point 日付
自由詩115/6/22 3:37
涙くらい流すべきなのだ自由詩115/6/18 0:23
煙草とレモンスカッシュ自由詩415/6/14 12:31
知らない自由詩115/6/14 12:27
雨音の詩自由詩115/6/14 12:23
大トロが食べられない自由詩414/10/25 18:05
おはよう自由詩114/6/24 4:29
口下手太郎自由詩014/6/24 4:28
ぱくぱくぱく自由詩014/6/24 4:26
ほんとうの魔法使い自由詩114/1/4 2:17
地球をひとまわりして自由詩114/1/4 2:10
すべてを諦めたあと自由詩113/12/3 8:55
夜を待っている自由詩413/12/3 8:52
雨のない雷自由詩013/12/2 0:13
いちばん君に似合う色自由詩313/12/2 0:09
スポットライト自由詩313/9/29 5:54
すべてを書きたかった自由詩213/9/20 8:28
ぶ厚いカーキ色のタイツ自由詩1*13/9/15 0:24
訳知り顔自由詩1*13/9/10 20:41
おじいちゃんの手自由詩113/9/9 19:39
緑ちゃん自由詩6*13/9/8 23:13
アールグレイのこと自由詩8*13/9/7 16:14
湖のほとり自由詩213/9/6 12:25
大人の男の人自由詩5*13/9/5 18:00
森の中にいる自由詩213/9/4 8:24
言葉たち自由詩6*13/9/3 12:37
ゴロツキさん自由詩1*13/9/2 17:54
セザンヌ自由詩413/9/1 17:18
蝉も消えた自由詩313/9/1 15:34
小指自由詩5*13/8/31 14:13

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