蝉も消えた
栗山透
音と色が消えた
雨を溜めているタンクは
そろそろまんたんになる
傷に敏感だ
腕を固定していたギブスを
予定日より早く取ったひとの話を
聞いただけで吐き気がした
普段はそれほど痛くないけれど
握手するときにぎゅっとされると痛い
という話をとなりで聞いただけなのに
重たくなって吐き気がした
笑って話す本人をよそに
ひとり冷たい汗をかいていた
辛辣な文章も読めない
辛辣な詩は書こうとするくせに
またここにいる
まだここにいる
蝉も消えた
自由詩
蝉も消えた
Copyright
栗山透
2013-09-01 15:34:56