小詩集【レトロな猛毒】side.A/千波 一也
 
なさい

看病の腕前には
それなりに自信があります
氷枕を保って差し上げましょう

揺れる火のように




二、未練


 何かを誤ったがゆえ、
 むかしの恋


目の前の誰かに
幸せの顔を見つけるとき、
それはそれは大した語り口ですが
幸せの顔を
みとめるとき、
ふと
きみを懐かしむのは
未練でしょうか

何かを誤ったがゆえ
むかしの恋


 枯枝を転がす、陽
 そこには真夏があるような
 
 砂上を逃げる、かぜの円
 そこから喉が
 乾いてゆく
 ような

 欲しかったものと
 欲しくないものとは
 なんだかと
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