小詩集【肯定ペンギンの消えたコロニー】/千波 一也
 



一、やわらかいものたち


みなもの月が
やわらかそうで
みんなたのしく眺めていたね

そして
だれかが
つかまえようとして
バシャリと濡れてしまっていたね

それを
だれかはよろこんで
違うだれかはともしびにして
なまえを呼んだり
うたってみたり


 あの日の
 みなもに生まれた波は
 すべてをつないで揺れていた

 みんなたのしく濡れていた


届かぬものに
背を向けたとき
そこにはじめてほんとが咲くよ

おわりを数える時計がすすむよ


 さよならの指紋とあきらめの関節
 たとえばそれが
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