小詩集【擬人絵図】/千波 一也
 



一、擬人法


かなしむこころではなくて
かなしみという言葉を覚えなさい

よろこぶこころではなくて
よろこびの色彩に詳しくなりなさい

問うことはよそにまかせて
やみくもになぞりなさい


優しさといたわりと子守歌と

そこに上手に落ちつけば
皮膚の温度は恒常です
はなさぬように
はかりなさい


ありがたいものはすり替わり、


俊敏に嗅ぎ分けることです
愚鈍さを

鋭利に聞き分けることです
優劣を

ただし隠して
野性をひそめて


思いやるための思い
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