小詩集【レトロな猛毒】side.C/千波 一也
 




一、レプリカの四月


たとえばそれは食卓のさかな

二度と泳がない姿はあわれです
しかし言葉はあぶくですから
気付かれずに消える、その
あぶくこそが
あわれです

おぼつかない箸使いでは
落としてしまう、
かけがえの
なさ

にぎやかなランプには
よくよく影が
お似合いで


いろとりどりが、春
つまり自由という名の鉄格子です

えらび抜かれた策略だけが
憂いを占めて、
あふれる
春です



たとえばそれは浴室のあかり

窓をもとめる心地よさを

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