原風景5/日雇いくん◆hiyatQ6h0c
そんな焦れったさと、気が立っているのとで本の内容が頭に入りにくかったので一回本を手から離すと、立ち読みせずに買い、落ち着いたところで読めばいいんだということに気がついた。
貧乏な生まれ育ちなので、読書はもっぱら図書館と立ち読みで済ませてきたのだったが、今回は生活がかかっていることだし、さすがに金をかけなければいけないだろう。
本に多少の金を惜しんだところで、どうせパチンコやら酒やらに金を使ってしまうだけだ。
そう思い込ませ、まるで清水の舞台から飛び降りるような気持ちでレジに向かい、身を切られる思いで、長年使っていたためあちこちにほころびが目立つ、合成皮革で出来た二つ折りの財布から金を出
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