しりとりの詩 2nd[379]
2008 05/14 23:42
mizu K

夕餉に魚をむしゃむしゃやる
背骨の稜線を頭からしっぽへ

むしゃむしゃやりながら
隣のひとにちょっかいをだすが
おほほほ とかわされてうまくいかない
むすめはもくもくと箸を動かしている
いつかの夕食の席もこんなだったっけ
まだむすめは露ほども存在していなかったころ

魚といえば
作家の川上弘美さんが芥川賞を受賞する折に
選考を友人の方々と酒をのみながら待つ場面があって
選考結果の電話を受けて席にもどろうとしたら
友人たちの顔がみんな魚の顔をしていて
ふあんそうな目で見ていたという
そしてだいじょうぶでしたと伝えると
うわあとみんな人間の顔に戻った
というくだり

をぼんやり思い出しながら
水銀をいやおうなく蓄積せねばならなかったものたちのことを考えた
明日晴れていたら
レコードプレーヤーの手入れと
屋上でしゃぼんだまを飛ばそう

#川上弘美「魚の顔」『あるようなないような』 中公文庫 2002. p.105 - 107
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