しりとりの詩 2nd[212]
2006 04/08 18:13
まきび

「この!居候め!」
まあまあそういうな
「だってこいつもう半年もいすわってるんだぞ」
そうだろうとも

あ、違った
おまえだってやつを利用してるんだからいいだろう
だった

部室のかたすみにあった
古ぼけた台本
「いったいこんなセリフのいいまわし誰が考えたんだよ」
ま 練習用だからいいけどね
作った本人は、コンクールの台本にでもするつもりだったんだよ、きっと

こっけいだ
僕たちは自分のことが一番見えない
その盲目さが
こんなナンセンスな代物を僕の前へ置いてった

台本を放り捨て
木造りの硬い長いすに寝そべる
中庭を行き交う人々の談笑と
春らしい揺らめきを目の端に見ながら
ゆっくりと眠りに落ちる

次に目をあけると
あたりはもう暗かった
一階でただ一つ明かりのついた教室に
はげ頭の教授と学生たち
昼間は見えなかったいろいろなものが
僕の目にも見えてくる

あーあ
なんてナンセンスなんだろう
君を見るためだけにここに粘っていた僕も
恋人のいる男をずっと見つめている君も
強い風に吹かれて飛んでったか
掃除のおばさんに持ってかれたかしたんだろう
もう足元にない台本も

この世の春ときたら
盲目の人間たちであふれていて
僕はまた
部室に帰るしかなくなってしまったじゃないか
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