【petit企画の館】/蝶としゃぼん玉[563]
2017 09/30 04:01
ハァモニィベル


 「旅人の夜の歌」

ゲーテの有名な詩で、ⅠとⅡの二つありますが、
此処で紹介するのは(Ⅱ)の方です。原文は以下。

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❞ Wandrers Nachtlied ❝ 

Über allen Gipfeln
Ist Ruh,
In allen Wipfeln
Spürest du
Kaum einen Hauch;
Die Voglein schweigen im Walde.
Warte nur, balde 
Ruhest du auch.

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さて、これを
以下の様に色々な人が訳しています。
訳された詩を比較鑑賞してみましょう。

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すべての峯に/いこいあり
すべての梢に/そよかぜも絶えし/しずけさあり
森には鳥のうたもやみぬ
まてよかし やがて
汝も憩わん
(片山敏彦訳「ドイツ詩集jより)


山々は/はるかに暮れて
こずゑ吹く/ひとすぢの/そよぎも見えず
タ烏のうた木立にきえぬ
あはれはや
わが身も憩はむ
(大山定一訳「ドイツ詩抄」より)


峯々に/憩いあり
梢に/かよう/風もなく
森に小鳥の声もやみぬ
待てしばし やがて
なれも憩わん
(手塚富雄訳「ゲーテ詩集」より)


山々の頂に/憩いあり。
木々の梢に/そよ風の気配もなし。
森に歌う小鳥もなし。
待よかし、やがて/なれもまた憩わん。
(高橋健二訳 「ゲーテ詩集」より)

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この詩は、雄大ながらもなかなか哀しい詩なのですが、
最終行の哀感は読み取れたでしょうか。

この、ゲーテの「旅人の夜の歌」を

哲学者の西田幾多郎は、こんな具合に
解りやすくコンパクトに訳しています↓。


  見はるかす山ゝの頂
  梢には風も動かず鳥も鳴かず
  まてしばし やがて 汝も休らはん


風景の息を止めたような静寂が伝わってくる名訳だと(私は)思います。この訳詩は、九鬼周造の墓に、西田の揮毫で刻まれています。



ゲーテが31歳のとき山小屋の壁に鉛筆で書きつけたこの詩を51年後(死ぬ直前)に再訪した彼が口ずさんだ時、その目に浮かべた涙がこの詩の意味を語ります。



わたしも訳してみました。
「旅人の夜」
http://po-m.com/forum/showdoc.php?did=332899


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〔資料〕
●ゲーテの山小屋(ゲーテが散歩したチューリンゲンの森)
https://4travel.jp/travelogue/10470736
●詞:ゲーテ/曲:シューベルト「さすらい人の夜の歌」(Ⅱ)
https://www.youtube.com/watch?v=n1_OWbXa7bs

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