2009 07/03 00:03
松岡宮
★ことばの温度差こころの距離感/全 美恵(チョン ミヘ)/私家版★
このあいだの梅島ユーコトピアでの「下町ポエトリーリーディング」で、著者の全さんがいらして、この詩集をみんなに貸し出していました。どうしても読んでほしいという情熱に貫かれたこの詩集は、日本に生まれた韓国人の、日本で生きてきたなかでの違和感というメッセージに満ちています。
借り物なのでなかなか全文写すことができにくいので、要約ですが印象に残った詩をメモします。
「世間話し」という詩では、近所の人に
「あなたがチョーセン人 いや韓国人だってことは 言わないほうがいいわ
でもあなたはどこからみても日本人 やまとなでしこだから 大丈夫」
といわれたことを描いており、印象に残りました。また、「黙秘権」という詩では
この国では声を荒げるのは下品な行為
だからみなさん黙っている
隣の国みたいに 座り込んだりは しない
という旨のことが書いてあり、印象に残りました。
このほかにも、カタカナのハングル語講座もあり、それはとても面白くて判りやすく、勉強になりました。
最近、いろんな場面で、人はどのくらいが同一で、どのくらいが異なるのかということを考えます。人間の異種性について、その違いというのは正確に認識されなくてはならないのですが、それは過度に一般化されがちなのだということを実感します。ある属性がもたらす、その人に対するイメージは、かなり違いがあるのでしょうね。それが悪いというわけでもないのですが(わたしも妄想で詩を書いているようなものですが)、人がもつ何らかの属性とそれに伴うイメージについて、それが妥当なものなのか、客観的に見るような作業も必要なんだなと・・・最近思っています、なかなか難しいですが・・・。
もうひとつ思ったのは、違和感を表出するのに詩というのはいい手法かもしれないなあということでした。この詩集は、全さんの描きたいことがストレートに伝わって、すごく面白いのです。わたしにはこんなふうに書くべきことがあるんだろうか、とさえ思いました。詩だからこその面白みかもしれないな・・・。
全さんはポエケットに出展されるそうですので、関心のある方は立ち寄ってみてはどうでしょうか。