生贄合評スレ[292]
03/29 21:03
石川和広

>>289

光井さんの「名前のない少女」読みました。
僕には2つの箇所が良いように思いました。屋上、少女、いじめ、自殺というとなんとなくそういう物語が思い出す方もいるかもしれません。

しかし意外とそうではないように思いました。一つは押し花のストラップです。これは男の子があげたものですが、大事に持っていた。その思いの強さが男の子をおののかせます。一見単なる片思いにすぎない。しかし、それをちゃんと身につけていることに、自分が誰かに求められていたという責任に少女が死んでから気付くのです。これは苦しい。なぜか。自分がサプライズをつまりいたずらをするようなガキなのに、思いを寄せられた一人の人間だったことが事後的に迫ってきているようです。まだまだはっきりとは書けていないとしても私はその可能性を感じたい。

また「名前のない」とはデスノートに名前がないから、少女自身は死にたくない。殺される側にまわりたくない。しかし憎んでいる。でも殺すか殺されるかの選択に陥り自らを殺すことにしてしまった。

耐え難い殺意や憎しみの中に少女もいたくない。好きな男の子も死んでほしくない。その葛藤の中でそういう世界から脱出したくて死んでしまう。男の子を置いて。

これを男の子へのいかなる感情と捉えればよいか。一生男の子の心の中にいたいという。
男の子はたぶん少女が死ぬことも、自分を好きだったことにも気付いていなかった。死んでから彼女とはじめて会えたのです。
この誰かが死に追い詰められるほどに逼迫が常態化している世界で、それを救う術があるとしたら何か。
ヒントがあるのは、名前がないというのは男の子にとって名もない少女だということで、裏を返すと誰かの存在をどこかで、感じつづけることです。
誰かが死んでからでは遅い。しかしどうしたらいいのだろう。その問いがタイトルにあると思います。

描写はシンプルで粗い感じですが、大きな骨格を読むなら実は詩のもつテーマ性自体は大切な問いだと僕は考えます。
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