生贄合評スレ[13]
2004 11/02 01:35
田代深子

 傷ついた孤独な「けだもの」というロマン主義的なモチーフを、終始一貫して裏切らな
いスタイルは、読者を安心させるがつまらないものでもある。ただ、前半に見られる「け
だもの」の具体的な描写は、むしろ「けだもの」の具象化をしりぞけるという意味で、い
くらかこの作品に特色を与えていると言えるだろう。
 「けだもの」の死や殺すことについての言葉には、さすがにもう少し書きようがあるだ
ろうとつっこみたい。また結びのポイントとして「けだもの」が自らを知らないというこ
とをもちだされたとき、この作品における「視線」の不安定さが露呈するのだが(誰が
「けだもの」を見て語るのか、「けだもの」のいる場所はどこなのか、語り手はどこにい
るのか、語り手が「けだもの」を確信する理由は何なのか…など)、この不安定さの露呈
が必ずしも魅力的な文体に生かされていないのが残念だ。

 以上、傷ついた孤独なけだものは、祝祭のはじまりの生贄にぴったりだからだよね、と
酷評をにやにやしながら書いてみました。


#でもむしろ、ここでこういうことを書くやつのほうが、生贄にされる可能性は高い気もするよ>いとうさん
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