恐怖体験[129]
06/18 15:12
北村 守通

あれはまだ私が高知に住んでいた頃だった。
中学生になっていたとはいえ、自分の部屋などはなく、その代わり縁側に私の机はあった。
クーラーもないから夏は必然的に窓を開けて対応する。
そんなある夜のことだった。やはりその日も虫の音に囲まれながら机に向かっていた。
ふと、その音の中に一匹の飛行する羽音が聞こえてきた。
反射的に窓を見る。茶色い物体が近づく。
蝉か?
そいつはなんと私に向かってきた。

背筋を使って避ける。
その時、時間が止まった。全てがスローモーションのコマ送りになった。今思えばマトリックスだ。
そして、そいつの顔が私の指一本先をかすめさった。
はっきり見えた。
見事なゴキブリだった。
私は絶叫した。
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