批評しましょ[299]
2004 09/19 17:58
一番絞り

「チャームポイント全調査」(チアーヌ)
http://po-m.com/forum/showdoc.php?did=19252&from=listdoc.php%3Fstart%3D0%26hid%3D764

山田さんが、この詩をそれこそ「オヤジの心性・倫理」丸出しで、(でなければどうしてこの「上司」のオヤジ性=それもかなりステレオタイプの、を感受し反発憤慨できるのかわからない)批評されたわけですが
わたしはこのステレオタイプなオヤジの心性(ということはかなり観念的な、現実には、ほんとうには在り得ない=なんとなればいまどきの審査員(会社員)は、もっと仕事上のプレッシャーがあり、それぞれ必死で点検、審査に余念がないのだろうから)に「違和」をぶちまけるほどの感受性が欠けておりますので
主に作文技術面で気のついたところを取り上げてみたいと思います。

まず、『チャームポイント全調査』という表題。
これはあきらかに詩の内容・場面とはそぐわない表題です。
「全」というのはこの詩の広がりの範囲からみて大げさに思えますし
「調査」というのも合わないような気がする。
ここは「調査」というより「審査」でしょう。
「調査」という語感には、隠されたものを積極的に暴き出し、あらわにするという意味がありますが
「審査」は、自己申告されたものをそのまま受容し、その範囲で評価するという響きがありますから、むしろこのほうがこの詩には、しっくりすると思います。

「チャームポイント審査」のほうがこの詩の表題には、しっくりするとは言っても、詩の批評というのは、表題が作文的にはしっくりしないにもかかわらず
『チャームポイント全調査』という腰の座りの悪い表題がなぜ選ばれたかというところに着眼し、それが意味するところを明らかにすることでもありますので
ここは、この表題のつけ方自体が詩全体を不安定にさせている要因としてあることをとりあえず指摘しておきます。

次に一連目。の、第一行。

 当たり前だけど
 「性格がいい」なんてことや
 「思いやりがある」なんてことは
 二の次三の次

この冒頭一行目「当たり前だけど」って句の使い方が、まったく不用意に思えます。
つまり「彼女」の思想傾向がこれでまったく「当たり前」だってことがはっきりわかるほどに最初にどーんと「あたりまえ」が強要されて押し出されてしまい
その後を読む気力を無くしてしまいます。
自分のこれから語ろうとすることが「当たり前」なら、書くことはあまり必要ないような気がしてしまうものですから。

この不用意さは六連目の第四行にも続いています。

 チャームポイントってなんだろう
 とりあえず
 調べたりするもんじゃないだろう
 ふつうは

「ふつう」のことを書くのなら書くことはないと思うのです。
いや、というより、「彼女」にとっては「ふつう」として世間に流通している思想(大げさにいえば)が問題なのか?
わたしなど、この「彼女」の世界観の扁平さに、まずもって読む気力をなくしてしまいます。「違和」どころの騒ぎじゃないのです。
「違和」なんか感じている人はほんと、やさしいというか、ドンカンというか。いわゆる「いい人」なんでしょう。(マジ)

二連目。

 目の前にズラーっと並ぶ
 モデルのお姉ちゃんたち
 さあ始まるよ
 審査審査オーディション

やや、投げやりな「大根の叩き売り」というニュアンスで書いてますね。
なんか、怠惰な情感さえ漂う。「やってらんねーよ、こんなの」っていう雰囲気と劇画的なセリフ回しはキライじゃないです。
これが最後まで「大根の叩き売り」的べらんめー調 &「やってらんねーよ」だったらとても面白い詩になる可能性があったと思います。
ま、オーデションが終わってからの検討会議とかの描写もその雰囲気でいってますが。
ひょっとしてそういう無為な男女の営為を描いているのか! おお! これは目からウロコだ! って感じもないでもありませんな。う〜む。ずずずーっ(鼻水をすする音)

あらら七連目。また「ふつうは」だ。これはイケナイような、あるいはなんらかの罠!か。

 「お前のチャームポイントはどこだろう?」
 不意に話しかけてくる上司の声に、
 「見えないところにあるんですよ」
 と笑って答えてみた

 上司も笑った

この会話はたぶん、実際にあったのでしょう。で、この会話を思い出して作者は即席にこの詩をつくられたのでしょう。
わたしは別にこの会話、悪いとは思わないな。ほんとうの美は内面に隠されている。これは、こんな怠惰で無為な営為を続けている、うっとおいしい日常にあって、それを知るものが冗談めかして、かすかに確認しあう素晴らしいひと時ですよ。
「オヤジの倫理」だなんて、とんでもないと思うな。ぼかあ。
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