批評しましょ[138]
2004 08/19 22:36
一番絞り

石畑由紀子「足」
http://po-m.com/forum/showdoc.php?did=12200

これにリアリティをもたせるため、ぜひ、お風呂から上がったあと
男の血圧を測ってほしかった。
「ケ、ケツ圧、きょうはな、なんぼあったぁ〜?」
と男にいわせてほしかった。
せっかく静謐な香り漂う詩篇に、無粋なしちゅえーしょんは興ざめかもしれないけれど、
そもそも女の足を洗うというのは、これは、この男性の精神はかなり幼児化していることを
ぼくなんかにはうかがわせるものでして。
人の足、とくに足の裏というのはこれはもっとも身体で敏感なところでして、
ゴマ粒ほどのものでも、すぐにわかるほど感受性が強い。
そこは本来なら大地といつも接触している。そういう器官です。
いわば地球的な生命を感じる器官です。
こういうところに女体への関心が下がっていくというのは、これは、もう〈老人〉といってよい。
〈若い〉ときには、むしろ関心は上へ上へとあがってゆくのじゃないかな。
ま、いつまでもヘソの下あたりにとどまっている者もいるようだが。
この男性は、ほんとうに老人かもしれない。だからセックスのあと夕方まで腰が立たなかったのかもしれない。
とすると男の血圧はかなり上がっていて、最後の見納めに相手の女性の足に関心がいったのかもしれない。
にしても夕食がカルピス入りの牛乳とは、歯の悪い老人とはいえ遠慮しすぎだ。
もっとも、このようにしめやかなセックスと休息とお風呂のあとで老人が牛丼など食らえば
この書き手がつくり上げようとした静謐なふたりの世界はだいなしだろう。
しかし、「みつめあって笑う」のは、だれかが書いていたようにあまりに映画のシーンを意識しているので
この二人の演技性がかえって将来、危うく思えるしね。
きれいきれいにしてもらった足で、きれいきれいに歩いていってもらいたいのだが。
どーかなー。うーん。血圧だな、モンダイは。
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