石畑由紀子

二ヶ月ぶりに会って
しばらく動けなくなるくらいのセックスをしたあと
夕方にゆっくりと起きだして
二人でシャワーをあびた


あなたのマンションのユニットバスは
浴槽がとても小さくて
どうしてもぶつかり合ってしまうものだから
笑いながらそれぞれ自分の体を洗い
さて、流そうか と思ったとき
あなたはおもむろに私の前でかがみこみ
両手のひらで石鹸を泡立てて
私の足を洗いはじめた


太もも
ひざの裏
ふくらはぎ と
だんだんその両手は下がってゆき
足の甲にたどり着いたころには
二人とも無口になっていた
五本の指もその間も一本一本
時間をかけて泡と両手で洗ってゆく
あなたの真剣な表情を
上からじっと見ていた
体ごと激しく揺らして飛ばした想いが
さらに熱くなって
胸にかえってくるのが
わかった


足の裏に何度も手のひらをすべらせたあと
私を見上げて
よし、という顔をすると
今度はシャワーと片手を使って
私についた泡をていねいに洗い流す
そのあとで自分の泡も洗い流す
二人は体中すっかりきれいになって
無言のまま一度きつく抱きしめあって
それから


冷蔵庫にあるもので
簡単な夕食を作り
いただきます、と向かいあって手をあわせた
あなたは牛乳に
必ずカルピスを入れる
テレビはつけずに
見つめあって
また
笑う





この先を
私はあなたと歩いてゆく
この足で





自由詩Copyright 石畑由紀子 2004-05-12 00:42:07
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