400字コラムあるいは情景描写道場[5]
2007 02/11 01:37
蒸発王

おもしろいスレです。
未熟ながら修行を・・・・!

夜明け(街)

空中で停止した『冬』の粒子がゆっくりと動き出し、
あまりの冷たさに固くなっていた空気が溶けはじめた。
夜明け。
濃紺から群青へと移り変わる背景に路が街燈が、しっとりと濡れている。ハッカの味がするような空気の中を独り、カラスが駅の方角へ向うのを首を伸ばして見送れば、襟巻きの隙間から蒼い空気が入って思わず首をすくめた。遠くで鳴く、黒い声が痛いくらいの静寂を破って、不思議と柔らかく耳に響いて溜息をついた。唇からもれる息の白さが1日の中で最も美しくなる時間帯だ。わけもなく息を吐いては、白い靄ごしに空を見た。
天上に凍てついた夜明けの星は、ビルの谷間に燃え出した紅蓮に炙られて急速に解凍されていく。
焦がす様な勢いで燃え広がる空の彼方に雲が吸い寄せられて、雲で顔を隠すように太陽の前髪が見えた。
蕩け出した金色が群青に代わって、町並みに流れ込んでいく。
少しだけ色のついた空気に、やはり、カラスの鳴き声が響いた。

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