疲れたのでお茶をし、団子を食べたが、胃には苦い。
　

私はもっと早くに死ぬつもりでした と川面を眺めて無理に笑っていた。
　

魚とどぶ川を歩いてた油膜に、誰かの夢の水面に波紋を放しにいく。
　

何もないような手に幸運を見た恋をする。
　

私は卵を割るように、カラースプレーを蹴飛ばすのです。
　

マグロを、ひとつもない銀貨につまむ。
　

晴れて、無形人間になって、蒸発していると、風呂場の体重計のメモリが霞になっていった。
　

君の何にもなくなった体には寂しい鼓動だけが流れていて、ミスチルすらそこにはうかばなかった。
　

信長さん、あんた美形すね、どう、信長さんなら一晩でデージュー稼げますよ、やりません？
　

久々に見た夢の中で、僕はまた夢を見ていた。
　

…おい、月に着陸したんだ。でもそこには実際問題として、兎ちゃん、いなかったんだが、つまり、ただそれだけの事で、それだけの？事で、車まで呼ぶ奴の気持ちが知れないぜ？なあ？
　

家からさいなまれて、子供がここにひとり、ひとりすらも帰れない彼らに、僕のほほえみに暴力的な家庭にできることはなんだろう。
　

ぷりぷりおしりの天使が舞い降りて、「ねぇさん、ざんげは必要ないっスよ」と厳かに告げてくれたので、わたしはひゃっほう、と叫び、街へと、バーゲンへと繰り出した。
　

祭りの帰り、父が改札口で駅員にこっぴどく叱られているのに出くわしたが、彼女のいる手前、完全に他人のふりで通り過ぎる。
　

死、すら「贅沢品」と禁じられ、「右の頬」の後は「左の頬」をも自ら差し出し、いつ果てるとも知れぬ地平の彼方へと、君からもらったマフラー巻いて、歩き続けるだけの、僕は歩兵。
　

指先で返そうとして滑らされつつ、ポイントを思いとどまった。
　

サビキ釣りをしていたのだが、何匹かの小アジが食いつき、入れようとしたところ、ビニールへビチビチと踊りまわってはじき飛ばされた。
　

長いトンネルを抜けてついにりんごの裏側へ出たのです。
　

自分の事をあげた棚からぼた餅が出てくる事を、天は二物以上お与えなさったという。
　

職人達が道路に白く「止」の文字を染め付けている、そのすぐそばで、看板にはもう「工」「事」「中」が光っている。
　

商品に値札がないので、これは幾らぐらいか、と訊ねると、店主は肩をふるわせて、幾らでもある！　と怒鳴った。
　

あたしは女王様でなくアリスで、アリスはあたしではなく女王様で、だからいつまでもいつまでも帽子屋さんに憧れてしまうの。
　

記憶の泉に言葉を投げて、広がる波紋をいつまでも見てる。
　

揮発性のタマシイの叫びは、すぐにきえてしまうので誰にも届きやしない、と、またタイミングをのがしてしまった私は、ため息をついて携帯電話をぱたんととじた。
　

キャラメル色の四角い空見上げて、ブリキの折り鶴ふっとふくらませて飛ばす。
　

何かを求めてさ迷った、自己を正当化して、過ちは砂になり、無造作に足元に散らばっている。
　

おめでとう　おめでとう　42年も生きられた　おめでとう　わたしは　かあさんよりもとうさんよりも　先に死にません
　

野球ボールを投げると、グラブが僕の青春も掴み、それを隠された。
　

立ち飲み屋で吐くと嘔吐物がバウンドし、スーツの新人たちを汚し、責任としてそれらを持ち帰ることになり、詰めたビニールにタクシーではねられた。
　

「マフラーの件で新しい動きがありました」と、男の声で留守電に吹き込まれていたが、もちろん私は「マフラーの件」とはなんの関係もなく、同じ空の下そんなことにかかずらわっているその男に申し訳なく思った。
　

自分の立ち位置をはっきりさせるために、イヤナモノはイヤダと不快感を表明する。
　

公衆トイレに入り、用を済ませ、元通りに鍵をかけてそこを出た。
　

その夜、旗手は、アトラスとなって虹を掲げる夢を見た。
　

一着は、彼の影だった。
　

穴を掘り進めると着いたマントルに、名を歴史に刻んだ。
　

携帯電話に砂糖をかけると甘くなる気がしたので塩をふっておいた。
　

（そうそう、あの小さな子供たちはみんな、南の風に飛ばされてそれぞれのおうちへ帰ったんですって、だから読者のみなさん、安心してこのご本を閉じてくださいね。）
　

暗闇の中で拷問され、脱獄を夢見て、掘っていた壁に、穴が次第に空き、５年後に見たのは緑の壁だった。
　

コレ何？と郵便ポストのメールを送ってきた甥の為に、余った年賀葉書を探す。