灯夜へ
木立 悟





午後に吠え夜に己れの洞に哭く肉のかずらに囚われし我




消えてゆくひとりの時間ゆうるりと道にかれた雨音のよに




午後に墜ち静かにぬるみ目のなかに羽ひらく人ひとくち歌う




仰いでもうつむいてもただそこにある幸いうすい命のあかし




重なりはどこまで深く重なりか鏡に沈む花に問う夜




硝子でも光でもなくむらさきは雪の穂波に遠去かりゆく




曇のない灯夜はふいに吹き消され雨の重なり語るひと息




朝になり朝になれない朝はいて午後のふところ泣き眠る頬




微笑みを降らせて我に触れるのは二度と戻らぬ声ばかりかな








短歌 灯夜へ Copyright 木立 悟 2006-12-30 22:20:21
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