シアトル・ピッツァ・タイム
肉食のすずめ

明るい冗句を放ちながら
子供を学校へ送り届けるママは
仕事の前に本人は気付いていない程
強くすするオートミール

兄は思っているいつか大きな金を稼いで
ママに楽をさせてあげたい
本人は気付いていないが大きな金を稼ぐのは簡単で
ママは決して楽にならない

弟は時々ボールを見当違いの方向に投げて
土手に転がって川に落ちて
「ごめん」って言って急いで取りに行くことを
しないへらへら笑ってだらだら歩いていく
本人は気付いているがそれは全くわざとだ

週末の午後には三人でピッツァを食べに行く
郊外のレストランへ車を飛ばして
席は隅っこの大きな窓辺
八つ切りのピッツァの細かなベーコンが焦げている
ママに二枚 兄と弟にそれぞれ三枚

ママがピッツァを食べ終えて細い煙草に火を点ける頃
太陽の光が赤く溢れる
全てをごまかす真実の光だ
三人は全く満足して頭部の前面を光に晒す

きわめて純粋な光
突如
窓の外に影が群れ
高速で行き交う
店内が斑に染まる
ママは気付かない振りをいつもする
ので気付かない
兄は直角二等辺三角形の
フォーメーションを自覚する
弟はどこからがピッツァでどこからがピッツァでないのか
分からなくなって少し止まる

誰だって
泣いてなんかいない
シアトル・タイム

ピッツァのような夕日を
ゆっくりすっかり食べてしまったら
車に乗って家に帰る


自由詩 シアトル・ピッツァ・タイム Copyright 肉食のすずめ 2006-12-27 14:02:37
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