私が浜辺で泣いていたとき
肉食のすずめ

強い潮風吹きっさらし
遠くに涙飛ばしながら
海坊主を呼んでいる
海坊主よ
海坊主よ
聞こえているか

私が浜辺で泣いていたとき
海からお前は現れた
そうして私の隣に座って
すっかり乾いてしまうまで
何も言わないで
乾き切ってしまったら
面倒臭そうに目を合わさずに
腰を上げて早足で波に溶けた

私が浜辺で泣いていたとき
お前の涙の流し方は
理想的だ
そうやって白けた顔をして
ただ滾々と流す姿がいい
腰から上を海面に出して
そう言ってくれた

私が浜辺で泣いていたとき
海坊主は言った
それはただの体液だ
細胞の一つ一つから
流れ出す塩と水分だ
大脳から至る電気の波だ
肩から上を海面に出して
そう言って

それとあたしの名前は
海坊主じゃない
大声で「海坊主」と呼ぶのは止めろ
大体「坊主」じゃないし
「海」に住んでるからって
安直に海って言うなよ
厳しく捲くし立てて
頭の先から水を吹いて
白い波に溶け込んでいった

海坊主よ
海坊主よ
聞こえているか
お前の名前を聞いてない
最近は
涙がすぐに乾いてしまう
風が強くて


自由詩 私が浜辺で泣いていたとき Copyright 肉食のすずめ 2006-12-23 19:56:45
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