アーメン
soft_machine

ちちとことせいれいのみなにおいてあーめん

幼い頃は弁当箱を開くと呪文のようなあーめんが現れた
まざーが見下ろす屋根はちいさな囲いに睨みをきかせ
あーめん 指を組まされる

チチトコトセイレイノミナニオイテ。アーメン

あーめんは犯す
団栗の樹の下で鬼になった数をかぞえながら狙うあーめん
甲虫が溺れるまで水槽に浮かべる黄金虫を花火で燃やし
灰となった骸はポケットに
繰り返される笑顔のあーめんは
蛇の抜けがらのかさかさに
空っぽの鳥かごに残る綿毛に
白黒テレビが映らない時も
青空の乾かないあーめん

あーめんはオルガンの和音のようにおそろしい
蜘蛛の巣に残された蝶の不揃いな胴体に
触れた手首がじゅくじゅくしたって
長いこと掛けて盛りあがった肉瘤は誇らし気
火事になればきっと綺麗な夢が見れたのに
けーさつに母親があたま下げたあと平手打ちされる
あーめんは雨の歌がいくつもあるようなおそろしさ
そんな時ぼくは壁紙の神秘的な模様を見つけ
心を体と感情から切り離さなくてはならない

父と子と精霊の御名に於いて、アーメン

クリスチャンでもないくせに
アーメンがぼくを繰り返すのか
陳腐な慰めを
それでも溢れる野心で
弓矢や鉄砲弾や中性子の前に泣いている
波の遥かでゆれる木片に降りたっても
羽撃けないのでツバメすら癒さない
片手間は
グラスの其処で乾いてゆくアルコール
何年も読まれぬまま色褪せてゆく頁
冷え切った夜のベッドで
互いの距離を見張り合うしかないふたりも
クリスマスのざわめきに
ひっそりと
聞き耳をたてるホームレスも
かじかむ夜に段ボールで立ち向かったベンチの先端で
絶望に目隠しをされたまま匂いで探るように
思い出すと繰り返す
雨の日になくした靴下が
見つかりますようにアーメン
風が吹いても狼煙が真直ぐしていても
一歩踏みだす度に行方がわからなくなって
嘘だと言われても
信じなければならないだろうし
花は花びらと成れば花として咲くのでは
ない。ならば
皆が自由に国境を掴めるようにアーメン
ことばもやがて不思議な結晶をするだろう
父親がかーさんを叩かない日がくれば
子供達には祝福だけを求め
ただ降り積む

アーメン

 あした、晴れますように






自由詩 アーメン Copyright soft_machine 2006-12-22 05:51:20
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