水軌
木立 悟




ほころびをなぞる指さきを
もうひとつの指が追いかける
つゆ きり もや
つゆ きり もや
ふたつ ぬれる


いきもどる雪
手玉 てのたま
三つのやりとり
いさめる声なく


波に触れて火照り
底のかたちを巡る
輪が環にかえり
熱は残る


虹へと流れる地の色を
陽は静かにわたりゆく
土の名前 葉の名前
呼びかける間もなく流れ去る


鏡のなかの雨
向かいあう鳥
音はむらさき
光源の前の背


長い手足の
遠い影が
誰も通らぬ道を
はずれる


色はずっと鳴りつづけている
あれた肌にまとわりつく泡
こぼれては生まれる
ひとつの轍


曇は離れ 科は終わる
抄われた名前
はばたきと熱
鏡を迷い
指に残る















自由詩 水軌 Copyright 木立 悟 2006-12-18 17:49:54
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