隙間の中に
蒸発王

目の中に星屑がはいりました
ゴロゴロしてとても痛いのですが
暗闇の中でも
世界は輝いて見える様になりました


口の中に空が落ちてきました
舌の上で確かめた其の味覚が
あまりにも蒼いものですから
接吻がしたくなりました


耳の中を歌が通り抜けました
沢山の歌の中に
私を呼ぶ声も入っていて
振りかえってしまいました


指の中に約束が入りました
暖かい約束なので
誰かに触れる時
優しくなれそうな気がしました


目蓋の中に海がはさまりました
震える唇が
今まで一度もしたことの無い
ありがとうを作った時でした


胸の中に夕焼けが入りました
身体の内から明るく照らすので
真っ赤に熟した心が
何処にあるのか解るようになりました


隙間の中に
色々な優しさが入り込んで
肉が命を持つのを感じる時があります
そんな時の

ありがとう

という呟きが
また誰かの隙間を埋めるのを

おこがましくも
願っています




ありがとう



『隙間の中に』




自由詩 隙間の中に Copyright 蒸発王 2006-12-12 21:52:09
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