イエローファット病
嘉村奈緒

エゲレスで
イエローファット病が流行ってからは
刺繍入りのコルセットなんて、とか
上等の砂糖菓子なんて、とか
囁かれてしまって
女たちはとても恐れた

個体によって差はあるけれども
たいていの人はぶよぶよと膨れた
泣きながら千切っては捨て
千切っては捨てられて
高々と積み上げられてしまった
たくさんの悲しみは日に照らされると
ぬるぬると他の悲しみと溶け合った
国土が圧迫されるなか
ひとりの偉大な技術者が
一生懸命かくはんしたところ
上等なbutterが出来た
エゲレスはとても喜んだ
そのbutterはとても上等なので
国は豊かになった
イエローマウンテン問題も解決された
個体の差はbutterにも顕著に現れた
一級品のbutterを搾り出した女は
イエローファット病の検体提出を拒んだ
イエローファット病は猛威を振るう
イエローファット病はなくならない
イエローファット病は猛威を振るう
イエローファット病はなくならない

エゲレスは
butterの良い香りがたちこめる


それはとても良いバターですね
それはとても良いバターですね
それはとても良いバターですね


自由詩 イエローファット病 Copyright 嘉村奈緒 2006-12-12 20:07:49
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