風つかい
白雨パル

風をぐっ、と掴んで
わたしの髪が、ふうわりとクールダウン
こころもちが静かにチルアウトする


ついに視界がひらけて
この丘からの風景は、やさしく収斂されて
頼んでもいないのにひどくうつくしいの

わたしは
静まりを、虚ろに睨んでいる


風が、音だけで変わらずに吹いていて
感傷をぬくぬくと加速させている


こんなことだから
若者は数々の風景を、物語をザッピングして
半端に怒ったり、泣いてしまうんだ

こんなことだから
わたしはお腹を鳴らしながら
いつまで経ってもこの丘から動くことができないで
無感動のふりをしていなくてはいけないんだ



思いどおりの
風をつかって様々な色彩の空気をかきまぜて
価値のない幻想をつくって遊んでるんだ


あれ、ちょっと慣れてきてしまってるかな
無価値だからこそ、わたしは価値があったはずなのに

適当なものを、なるべく適当につくっても
それを面白がるひとがいたりして
うれしくて、かなしい


誰か
わたしにナンセンスをください

出来れば五〇〇円もください
パンかなにか、食べたい





自由詩 風つかい Copyright 白雨パル 2006-12-11 22:03:31
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