線香花火して死のう
しゃしゃり

女にふられたので、
それは夏のはなしだけれど、
線香花火して、死のうと思った。
あの子とふたりでしようと買ったのに、
できなかった花火が車のうしろトランクに、
いれっぱなし。
いれっぱなしの夏。
いれっぱなしのおもいで。
もう冬だ。
たのしかったはずの冬だのに。
デパートにいくと、
ジングルが流れっぱなしのうえ、
「世界でいちばんしあわせになるクリスマス」だとか、
ふざけたことをぬかしてやがるから、
放送室にのりこんで、
お経でも流してやろうかという気にもなりました。
疎遠になってしまった親戚の家の前を、
自転車で通り過ぎるとき、
ケーキのひとつでも、
持っていこうというつもりにもなったのは、
どうして、
あの子にやさしくできなかったんだろうと、
いまさら、
深くふかあく頭を垂れるきぶんでいたから。
クリスマスなんてなければいいのに、
でもそんな冬がきて。
線香花火の落っこちるのを、
ジイジイ鳴ってる夏のなごりを、
じっと見つめながら、
でも、
ふられるってことは、
あの子に愛してもらえないってことは、
それが死でなくてなんだろう。
俺はすでに死んでいる。
ああ名ゼリフ。
バケツにうつる月にあの子のおもかげが浮かぶ。
俺はもう終わりだ。
つづきはもうない。
うさぎもぴょんぴょこ飛んでいる。
クリスチャンになってもいい。
そして主の導きに盲いてもかまわない。
クリスマスなんていらない。
お正月まで寝ていたい。
そういえばお雑煮にはいのししの肉を入れるつもりだ。
いのしし年だから縁起もいいのだ。
来年もいい年になるといいな。
って、またいっぱいふられるつもりなのかしら。
まさかね。
ああ薬が効いてきた。
もう眠ろう。










自由詩 線香花火して死のう Copyright しゃしゃり 2006-12-08 20:09:11
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