spring
umineko

あたりまえの生活というものがよくわからない

平日のお昼時に街に立つ
オフィスから吐き出された人々は
中也の作品に、嗚呼サイレンだサイレンだ、といったのが
あった気がするそれに近い
ぞろぞろと
ぞろぞろと男と女
紺色のスーツは太陽が嫌い

コンビニのレジに紺色が並ぶ
信号を待って紺色が揺れる
半透明なビニール袋が
孤独の代わりに挨拶をする

私は反対の方角へ
強い足取りで歩を進める
うつむく人怖がる人目を逸らす人
携帯をかざした人たちだけが
笑顔にも似た唇で

誰かに認めて欲しいから
恋をするのは
それは


私は
誰よりも
私が好きだから
おんぼろなエンジンで
うまくは走れないけれど
それでもいとおしい
ノイズのように

何人もの人が
あなたを好きだろう
私は後ろ手の
花束さえも渡せずに
おめでとうって それ
誰に言った

強い足取りで

あなたを好きだった
そのことだけが私の支え

だから
負けるはずもない

春はもうすぐ
   


自由詩 spring Copyright umineko 2004-03-30 07:05:52
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