スポンジ
肉食のすずめ

なんでそこにいるのかも
忘れてしまった
世界一大きな
白いスポンジを見ている

どのくらい大きいかは
見ていれば分かる 今までに見た
一番大きな海より
大きい

白いスポンジとはつまり
対岸だ
川を挟んで白いスポンジ
遥か遠く
少し低く
洗剤まみれの鳥が落ちている

白いスポンジとはつまり
彼岸だ
死者が歩いて白いスポンジ
月は沈み
日は昇り
家に帰らない大人子供

隣に座った
ひげ面のでぶ
真剣な顔で
私の尻を触る
この人が誰なのかも
忘れてしまった

地平線の近く枝が刺さっている先のほうで
まだ生きようとする虫黒い光沢短い触角
太い腹部ささやかな風枝を揺らす
揺れる卵を産み付ける虫が卵を
枝に括りつける枝が倒れそう落ち
倒れ落ちそう虫倒れ落ちそう虫落ち
虫 虫 虫 虫 虫 虫 虫 落ちた
落ちて
動かなくなった

落ちなかった

何故
そんな遠くにあるものが

私は近眼なのに

隣に座った
ひげ面のでぶ
帰ろうとして
金を要求する
相場がいくらなのかも
忘れてしまった

白いスポンジの遥かに
悲願の枝が刺さっている
とりあえず繋がった糸の先を
見ようと目を凝らす

私の襟をつかむ
ひげ面のでぶ
唾を飛ばしてわめき散らす
声が高いよ
糸が見えない

なんでここにいるのか
思い出すじゃないか

枝が刺さった場所を
忘れてしまうじゃないか







自由詩 スポンジ Copyright 肉食のすずめ 2006-12-07 13:55:18
notebook Home 戻る  過去 未来